とある蓮田のハス2018

長野県安曇野市(8/10撮影)

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緑の田園風景の中に

突然現れる

一面のピンク色。



一面のハスの花
EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM

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100m×25mの田んぼ全体に
ハスが生い茂り、
おびただしい数の花を咲かせている。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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驚いたことに、
どの花も
すこぶる状態がいい。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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花の季節も
終わりに近づいているのに、
まだ膨らみつつある蕾もある。

ハスの蕾
EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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ハスの楽園みたいなところだ。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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今年はかなり激しい夏だったので、
くたびれてしまった蓮池も
多かったと聞く。

だが、ここは違った。

EOS5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L II USM

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これだけの数の花が
これだけの状態で咲いているのは、
奇跡的と言っていい。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM

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けれど、この蓮田
いったい誰が作っているのか。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM

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咲いているハスは
レンコン用の品種ではなく
れっきとした園芸用だ。

大輪のハス
EOS5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L II USM

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謎は深まるばかり。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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すると、
そこに偶然
この蓮田の主がやってきて、
この蓮田の謎を教えてくれた。

EOS5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L II USM

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この蓮田の存在理由。

それは
「ハスが好きだから」。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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この蓮田は、
田んぼの主の
「ハス愛」が具現化したものなのであった。

EOS5D Mark IV + EF16-35mm F2.8L II USM


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ハスを愛する
ひとりの人間が作った
ハスの楽園。

例年なら花が終わってしまっている時期だが、
この夏のバカみたいな猛暑で
花が持ち直したそうだ。

来年はもっと早い時期から
訪れてみようと思う。



撮影後記

やっと見つけた蓮田

 この蓮田、いろんな人のブログや新聞に以前から登場していて、行ってみたいなと思っていたのだが、いまいち場所がよくわからなかった。
 身近に知っている人もいないし、いろいろな写真の景色をヒントに、自分の足で探すことにした。
 広大な田んぼの中をアミダ籤のように張り巡らされた細い道を、車で行ったり来たり。
 やがて、一面の緑の向こうに、一筋のピンク色の帯を見つけた。
 あの色はもしや・・・。
 近づいていくと、やはりそれは蓮田だった。
 ピンク色の帯に見えていたのは、満開のハスの花。あまりにも花の数が多くて、その蓮田1枚が遠くから見るとピンク色に見えるほどなのだった。

 写真を撮っていると、自転車に乗った高齢の男性が蓮田にやってきて、畦の奥に入ってハスの様子をみている。
 もしや、この蓮田の持ち主ではないか、と思って声をかけたらまさにその人であった。
 いろいろと話を伺うと、ご主人は並々ならぬ「ハス愛」の持ち主。
 ハス好きが昂じて、自分の田んぼを丸々1枚、蓮田に変えてしまったとのことだった。

 この蓮田の始まりは、8年前にさかのぼる。
 当時からハスが好きだったご主人は、埼玉県の種苗会社から通販で1株のハスを購入。
 ご主人はそのハスを、庭先の石でできた臼に植えた。
 ところがハスは驚異の生育力でまたたく間に大繁茂。臼の小さな窪みでは、すぐに手狭になってしまった。
 そこで、ご主人は自分の田んぼの片隅に、そのハスを移植したのだ。

 田んぼの隅っこにぽつんと植えられたハスは、しっかりと根付き、毎年少しずつ生息域を拡大していった。
 ご主人はハスが健全に育つように、一生懸命世話をすること8年。
 今年、ついにハスは100m×25mの大きな田んぼの全面を覆い尽くすまでになった。

 ご主人はハス栽培の苦労について語る。

「ハス栽培はセリとの戦い」

 セリとは、春の七草メンバーで、鍋の友であるあの「セリ」。
 ハスにとって一番の天敵はこのセリなのだという。
 最初、田んぼのあぜに陣取ったセリは、ハスが育つ田んぼの中に静かに侵入してくる。
 そのまま放っておくと、セリはあっという間にその勢力を拡大して、ハスの根の隙間を埋めるように大繁殖する。
 そうなってしまうとハスは根詰まりを起こし、養分を全部セリに横取りされて枯れてしまう。
 だから、ハスを守るためには、このセリの侵入をなんとしても防ぐ必要がある。
 しかし、セリへの対策は「ただひたすらむしる」しかないのだそうだ。
 セリの侵入をひとたび許すと、セリは田んぼの中で高密度なコロニーを作る。
 コロニーを形成したセリは根を地中深く張り巡らせて、「何度刈っても生えてくる」駆除不能なセリへと変貌してしまう。そうなってしまうともう打つ手がなく、弱っていくハスをただ眺める羽目になる。
 だから、セリが田んぼのあぜから忍び足で這い出てくるところを、地道につまみ出すしかないのだそうだ。
 この田んぼのあぜは、ざっと計算して1周250m以上ある。これを全部人力で手入れする。
 草刈り機は使えない。
 草刈機で刈った草は、細切れになって辺りに飛散する。
 セリというのは恐ろしいほど強靭な植物で、草刈り機で千切られたセリの茎が田んぼの水面に飛んだりすると、茎は水面を漂いながらやがて発根し、田んぼの真ん中あたりで根付いてしまうこともあるのだそうだ。
 またセリは、ハスが芽を出すよりも早い季節に活動を開始する。
 春、傍目にはまだそれが蓮田とはわからないうちから、セリの駆除を始めなくてはならない。
 「ハスを育てるのに一番忙しいのは、実は春なんですよ」
とご主人は語る。
 私が昔通っていた蓮池も、人の手が入らなくなってからは、あっという間にセリをはじめとした雑草類に占拠され、いまや昔の姿は見る影もない。 

「強敵アブラムシ」

 ハスには特有のアブラムシが付く。
 これがまた写真屋泣かせで、蕾の表面や、咲いた花のすぐ下の茎に真っ黒の集団でびっしりとこびりついて、写真に撮っても、ただ気味が悪いだけになってしまうのだ。
 人の手が入っていないところのハスは、この真っ黒集団に完全にやられてしまっているものも多い。
 このアブラムシは、大繁殖してしまうと5年間くらいはハスが支配されてしまうそうだ。
 さらに困ったことに、大繁殖してからでは効果的に駆除できないのだとか。
 だから、発生する前に殺虫剤を使って先手を打っていくしかない。
 この蓮田の花の状態が素晴らしいのは、ご主人によるアブラムシ対策が地道に行われているから。

ご主人の「秘密の花園」

 これほどまでに長年心血を注ぎ込んで育てたこの蓮田。
 誰に見せても自慢できる出来にもかかわらず、ご主人は「あまり宣伝したりはしないんです」とのこと。
 もともと、ハスを愛するご主人が、個人的にハスを楽しむための蓮田だ。
 もしもこの場所が有名になって多くの人が押しかけたりすると近所に迷惑がかかってしまうし、なにより大好きなハスを育てていくことができなくなってしまうから、だそうだ。
 私も同じハス愛を持つ人間として、ご主人の言い分はとても理解できる。
 こんな素晴らしい蓮田を皆に見てもらいたいという気持ちはあるが、それよりも、ご主人のハスを愛するその思いを尊重したい。
 ここはご主人による「秘密の花園」なのだ。

 私は撮影地の秘匿はしない主義だ。
 なぜなら、写真は場所で撮るものではないと思っているから。
 しかし、今回はちょっと事情が違う。
 この先、この素晴らしい蓮田を存続させるためにも、詳細な所在地については伏せさせていただきたい思う。
 しかしながら、ハス愛のある人であれば、必ずここにたどり着くことができると思う。
 もしもこの場所を見つけることができたら、ご主人の苦労に思いを馳せながら、一面のハスを静かに楽しんで、この蓮田の末永い存続を願って頂きたい。


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“とある蓮田のハス2018” への2件の返信

  1. 私は蓮を撮るために写真の沼に入ってしまいました。昨年から近所で第2名神高速の工事が始まり、毎年
    撮影していた蓮畑が埋め立て・掘り起こされてしまいました。蓮の次に狙いのコスモス畑も、大きい郵便
    局建設で様子が変わってしまいました。人間の力で様子が変わるのも残念に思います。
    今年は暑すぎて、蓮も開花早く、暑いからか虫が少なかったように思います。残された蓮畑で、蓮花達を
    大切に撮影していこうと思っています。しかし、腕はなかなか上達しませんが笑
    毎回のお写真楽しみにしています。これから大きい台風も近づいておりご自愛ください。

  2. Masao Kanou さん
    ご無沙汰しております。
    コメントありがとうございます。
    心中お察しします。
    自分が撮り慣れている場所に別れを告げなくてはいけないのは、本当に辛いですね。
    色んな物事が変わってしまったり失われたりしまうからこそ、我々は多分写真を撮っているのだと思いますが、それでもやはり、愛着のある被写体を失うのはショックが大きいですね。
    私も、ブログ移転に伴って、昔撮った白鳥の写真や蓮池の写真を再編集していますが、なんとも言えない懐かしいような切ないような気持ちになります。
    そして、あの時頑張って撮ったことの価値を噛み締めています。
    Kanouさんも、残された蓮畑をぜひ大切に撮影なさってください。
    10年後、20年後にそれらの写真が、また違った意味を持ってそこに存在することと思います。

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