平田謙三 平田浩一 氷彫刻『DRAGON』【5】

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5:40

『DRAGON』
完成。

平田謙三・平田浩一 作 氷彫刻『DRAGON』完成

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平田謙三・平田浩一 作 氷彫刻『DRAGON』上半身

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平田謙三・平田浩一 作 氷彫刻『DRAGON』翼

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平田謙三・平田浩一 作 氷彫刻『DRAGON』下半身

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平田謙三・平田浩一 作 氷彫刻『DRAGON』全体

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彼らの道具箱の中に、
設計図を見つけた。

いま目の前にそびえる氷のドラゴン
そのままの姿。

氷彫刻は恐ろしいまでの忠実さで
設計図を反映したものだった。

平田謙三・平田浩一 作 氷彫刻『DRAGON』設計図

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完成の余韻に浸る間もなく、
撤収作業が始まる。

自分の手足とも言うべき工具を洗う、
その丁寧な扱いは健在である。

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淡々と進められる撤収作業。

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自分たちの作品の出来栄えを
ゆっくりと眺めることもない。

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5:58

競技終了を待たずに、
会場を後にする平田親子。

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6:00
競技終了。

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会場に
大勢の観客が戻る。

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ライトアップされる作品群。
競技終了後の
ごく短時間だけ行われるイベントだ。

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極彩色に輝くドラゴン。

カラーライトアップされる氷彫刻(平田謙三・平田浩一 作 氷彫刻『DRAGON』)

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まだ明けやらぬ空へと咆哮する。

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平田謙三・浩一 作
『DRAGON』。

数々の難局を乗り越え
この世に生み出された氷竜。

その体内に息づくのは
氷彫刻に賭ける親子の
熱い魂だ。


~完~


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撮影機材

EOS5D Mark II
EF300mm F2.8 L IS USM
EF70-200mm F2.8L IS II USM
(全て手持ち)

 

撮影後記

 夜通し12時間、真冬の屋外でカメラを持ったまま立ち続ける。
 今回は、途中休憩も挟まずに撮った。

 ただただひたすら撮り、空が白む頃には意識は朦朧とし、腰は絶え間なく痛み、足裏の感覚は消失し、普段は楽々と振り回せるレンズも鉛のような重さになって、歯を食いしばらねば、持ち上げることすらできなくなった。

 とは言っても、私は単に「撮っていただけ」にすぎない。
 彼らは私がただ撮っていたのと同じ時間を、渾身の力で氷塊と格闘し続けていたのだ。
 私とは比較にならない労力である。

 徹夜の氷彫制作。
 それがいかに過酷な作業か、どれほどの気力と体力を消耗するのかは想像に難くない。

 競技開始の合図から作品が完成するまでの約12時間、浩一さんは、片時も氷の側から離れなかった。
 何かを口に入れたというのも見ていない。
 つまり、浩一さんはあの12時間、全くの不眠不休、飲まず食わずで氷を彫っていたことになる。
 凄まじい体力と精神力だ。

 徹夜の12時間を闘いぬいたのも束の間、彼らは瞬く間に荷物をまとめて会場から去っていった。
 彼らが会場を去る直前、浩一さんが、他チームの製作者と立ち話をしているのを耳にした。
「親父が、『どうしても9時までに仕事場に行って彫りたい』って言うんで帰ります」
 なんと、父の謙三さんは、これからさらに自分の職場で氷を彫ると言っているのだ。
 謙三さんは帝国ホテル専属の氷彫刻職人で、ホテル内に専用の工房を持っている。
 その謙三さんがこの後、朝9時までに職場にホテルに出勤し、こんどは仕事として再び氷を彫りたいというのである。
 徹夜の氷彫製作を終えたばかりだというのに。
 凡庸な言い回しだが、「三度の飯より氷彫刻が好き」なのだ。
 まさに、天職なのだろう。

 前回、平田親子が『龍』を彫り上げるさまはまるで、龍の発掘を見るかのようだった。
 氷に埋まっている龍の声に耳をそばだて、氷塊の中から龍を掘り出したかに見えたのだ。
 一方、今回の『DRAGON』は、それとは対照的に、混沌の中に帰ろうとするドラゴンを親子の駆使する数々の魔法で、有無をいわさずこの世界に召喚しているような印象を受けた。
 東洋の『龍』と、西洋の『ドラゴン』。
 その彫られ方にも、東洋文化と西洋文化が反映しているようで
面白い。

 今回のような高温下での氷彫刻制作は困難を極める。
 融点ギリギリの氷は、すぐに解けて形なき水に戻ろうとし、細かな細工も、あっという間に鮮鋭さを失う。
 造形いかんによっては、作品自体が崩壊してしまうおそれもある。
 ゆえに、暖かい日の氷彫刻は、「大きく丸く彫る」というのが無難かつ、定石ともいうべき選択なのである。
 だから、このドラゴンを見て、余計に驚かずにはいられないのだ。
 このドラゴンは、それぞれが氷彫を生業とし、氷の特性と制御法を熟知した平田親子だからこそ、作り得たものだ。
 彼らを支えるその比類なき手腕の根底には、名門ホテルの氷彫刻職人として、日々高レベルの要求に応え続けるためのたゆまぬ努力と研鑽があるに違いない。

「彫ろうと決めたものは彫る」

 決して妥協しない、プロの氷彫刻職人の矜持をそこに見た気がした。

 平田親子。
 彼らはこれからどのような氷彫を作り上げていくのだろうか。
 まだまだ期待は高まるばかりである。


再編集版あとがき

 この前年、『龍』の制作から彼らに夜通し密着しはじめたのだが、真に密着したと言えるのはこの『DRAGON』が初めてである。
 前年は、彼らと同時に他チームの制作も一緒に撮っていたのに加え、気の緩んだ深夜の時間帯に、私は一旦会場を出てしまっていた。
 少しの間なら、氷彫刻に大規模な変化は起きないだろうと予想しての軽率な行動だった。
 しかし、再び会場に戻ってきた時、氷龍は劇的にその姿を変えていた。
 そこから慌てて撮って、氷彫刻制作ルポとしての体裁はなんとか整ったが、肝心シーンがいくつか抜け落ちている。
 完成した『龍』の出来栄えがこの上なく素晴らしかっただけに、その制作過程の重要な部分を見届けられなかったことを悔いた。
 前年の雪辱を果たすべく、2回目の密着に臨んだのだ。
 これは、その記録である。

 真冬の一晩を、屋外で過ごすのは体力的にかなりキツい。
 足元からジリジリするような寒さが這い上がってくるし、空が白み始める頃には、上瞼がやたらと重くなってくる。
 ああ俺頑張ってるな、と思う。
 しかしよく考えると、ただ立ったり座ったりして時折カメラを構えているだけの私と違って、制作ブースの平田親子は全身に砕氷を浴びつつ、もの凄い重労働を休まずこなしている。そういう彼らに比べれば、ただ撮っている私など、ほんの軽作業をしているに過ぎないのも同然だった。
 この『DRAGON』の制作では、彼らの氷彫刻師としての芸術性だけでなく、不眠不休で氷を彫刻し続ける彼らの体力と精神力にも驚かされた。

 この『DRAGON』の写真は、いくつかのテレビ番組で平田さんの紹介とともに何度も使用された。
 彼らの代表作の一つであるだけに、ブログ初期の低画質画像がいつも気にかかっていた。
 今回、ようやくRAWからの再現像を経て、再アップに漕ぎつけることができた。

 この記事によって、彼らの魅力をすこしでも伝えることができたら幸いである。

(記 2018年8月10日)

 

 

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