平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『飛翔 ~大空に羽たく鳳凰~』【3】

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午後10時。

雲は晴れ、中天に月が輝く。
風が強い。

晴れて無風ならば、放射冷却現象によって
気温はたちまち下がってくる。

だが、この夜は強い南風によって、
地表に留まろうとする冷気が吹き払われてしまう。

気温はいまだ、氷点下に達していない。

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製作作業の進行とともに、
氷の切れ端などの「残氷(ざんぴょう)」が出てくる。

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作業の支障とならないよう、
会場の運営スタッフによって逐次、
残氷の回収作業が行われる。

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彼らは
この残氷処理のほか、
フォークリフトによる氷の組み上げ補助、
電源の供給や照明機材設置等、
夜を徹して、選手たちのさまざまなサポートにあたるのだ。

美しい氷彫刻につい目が奪われがちだが、
その陰には、
運営スタッフ諸氏の献身的な働きがあることを
ここに付け加えておきたい。

「安全第二」
時に男には
安全よりも優先させるべきものがある・・・のかもしれない。
いいヘルメットだ。

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平田チームの彫刻は
頭部に続く胴体の形が見えてきている。

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加瀬さんは
ひたすら氷の切り分け作業を続ける。

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正面からは見えにくい
氷の陰で、ただひたむきに氷と向かい合う。
その姿が、平田さんの父、謙三さんに重なる。

いつもこの大会で親子のタッグを組む謙三さんも
氷の陰で、黙々と自らの仕事をこなしていくような人だ。

加瀬さんも、そういうオーラを身に纏っているような気がする。

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氷の表面への彫刻が始まる。

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棒状のドリルビットで
氷の表面に
細かな凹凸を穿っていく。

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頭部の周りを彫り終わった平田さんは
本体の加工にとりかかる。

すると加瀬さんは、すぐさま頭部のパーツにブロワーを当て
削り屑を払い落とし始める。

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その息の合うテンポが
見ていて気持ちが良い。

まさに名バッテリーである。

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午後10時50分。

頭部のパーツが
2つに切り分けれられる。

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せっかく精巧に作ったのになんで、と思うが
心配はいらない。

後でこれらのパーツは
何事もなかったかのように
組み合わせられる。

このパーツ切り分けには
理由があるのだ。

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ここで再び
フォークリフトの応援要請。

切り分けた頭部のパーツを
荷台に載せる。

フォークリフトの使用は
便利だが、弱点もある。

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フォークリフトの荷台の上では
地上のように足を踏ん張って
重量のあるパーツを力いっぱい持ち上げるということができない。

不安定な足場の上で、
腕の力だけを頼りに
パーツを所定の位置に据える際、
大きな塊のままでは
荷台からパーツを移動させることすらままならない。

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あまつさえ高所での作業である。
パーツが思いがけず落下し、破損する危険性もゼロではない。

そういういろいろな弱点をクリアするために
パーツが切り分けられるのである。

一見して手間のかかる作業だが、
結果的にこれが、最善のリスクマネジメントでもあるのだ。

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無事、フォークリフト作業が終了。

氷は人の背丈を遥かに上回る高さにまで成長した。

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いよいよ、本体の彫刻が始まる。

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~ 【4】につづく ~

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