平田謙三 平田浩一 氷彫刻『2015年 飛翔』【4】

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午後9時。

気温摂氏0.1度。

天候は依然として雪。

各チームの氷はそのほとんどが
まだ矩形を保ったままだ。

図面がなかったせいで、
作業の序盤はかなり手間取った平田親子だが、
開始後3時間の時点で状況は完全に逆転した。

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ワシの胴体の上で
浩一さんの手が何度も何度も空を切る。

その指先は、これから胴体に生えてくるべき
まだ見ぬ翼をなぞっているように見える。

設計図どおりに部品を作って組み合わせるという
普段どおりの制作過程であれば決して見られない仕草だ。

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空中にメジャーを当てる。
彫刻に使える氷は限られている。

慎重に部品の寸法を判断する。

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翼の接合に入る。

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薄い氷の板を斜めに積み上げるには
形状と強度の両面において
慎重さが求められる。

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浩一さんを謙三さんが補助する。

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1段目の接合が完了。
ここまでおよそ10分。

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2段目の接合に入る。
翼の形状となるよう、1段目とは角度を変えて接合される。

適切な角度となるよう、何度も調整が行われる。

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気温はまだ氷点下にまでは下がっていない。
荷重のかかる接合箇所には
ドライアイスが施される。

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2段目の接合が完了。

2段目の接合に要した時間は20分。
1段目の2倍の時間が費やされた。

翼の先端に近づくほど
作業の難度は上がっていく。

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2段目までを接合したところで、
浩一さんが筋彫りを施す。

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筋彫りの線に沿ってチェーンソーの刃が入れられる。

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翼面の厚みを削ぎ落とす。

大ノミが往復するたびに
平べったかった氷の板が、
生物的なカーブを与えられていく。

鳥の翼は平面ではなく、
翼特有の曲面を有している。
例え設計図があったとしても、
図面には描ききれない微妙な部分だ。

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翼の形、関節の位置、角度、
翼のしなり方。

どれをとっても実にリアルだ。

美術的なアプローチだけではなく、
鳥を生物的に理解していなければ
この造形は成し得ないだろう。

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観客からは見えない部分にも
手が入れられる。

氷彫刻である以上に
それは「鳥」でなくてはいけない。

浩一さんのこだわりである。

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曲面に仕上げた翼に合わせて、
翼の先端を削り出す。

リアルな氷の翼である分、
本物同様に翼の先端は薄くもろくなり、
そして大きくしなった曲面となる。

比較的頑丈な部分を仕上げ、
最後に繊細な部品を取り付けるという作戦だ。

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接合面を整える。

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右翼先端の接合。

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コールドスプレーで接合箇所を急冷却し、
一気に固める「氷の瞬間接着剤」だ。

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成長し続ける大ワシは
すでに地上高3メートル近い高さにまで達している。

組み上げた氷を足場にしての作業となる。

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左翼先端の接合。

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やはりコールドスプレーを使う。
平田流氷彫刻のお家芸だ。

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午後10時45分。
翼を広げた巨大なワシの全貌が
姿を現した。

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気温はマイナス1度。

ついに氷が解けない温度に達した。



【5】に続く 

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