平田浩一 中寺吉宣 氷彫刻 ”ファミリー”【5】

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20時56分。

次なる手順としては、
頭の部分を同じく別に運搬して
先程の首の上に据えるのだが、
平田さんがタツノオトシゴの頭部を見ながら考えている。

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加瀬さんと一緒に一度は頭部を持ち上げてみたものの、
運ぶのをやめて、またその場に下ろした。
作業に難ありとの判断だろうか。

そして検討の結果、選んだ手段は
「フォークリフト」。

オーダー後すぐさま、
フォークリフトの進入経路を確保する。

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頭部はすでに細かい細工が施されており、
衝撃に弱い状態になっている。
また、見た目以上に重さがある上に、
これ以上分割もできない。

ここは、フォークリフトで一気に組み上げてしまうのがベストだという結論に達したのだろう。

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頭部を運搬台の上に
慎重に載せる。

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そのまま平田さんも運搬台へ。

本体との位置関係をつぶさに見ながら、
数センチレベルで運搬台の高さ調整を指示する。

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息を呑む観客の注視の中、
無事、所定の場所に頭部が据えられた。

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すぐさま待機していた中寺さんが
頭部と首の接合面に水を流し込んで接着する。

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21時07分。
本体の上に1体目のタツノオトシゴが組み上げられた。

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やはり先程と同様に、
すでに彫刻された頭部を起点に、
タツノオトシゴの下半身部分を筋彫りしていく。

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21時16分。

筋彫りが完了。

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気温が氷点下となる。
これで氷は解けることなく
「育つ」環境となる。

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21時20分過ぎ、
平田さんが細めの氷材を切り出している。

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表面処理。

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アルミ板による
接着面の処理

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そして接着。

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こうして、タツノオトシゴの下半身部分に
横一列で氷が接着された。

平田さんに後で聞いたところでは、
「もうちょっとボリュームを出せそうだったので、
余った氷を足した」
とのことだった。




2次元平面図としての設計図は誰にでも見える形で用意されているが、
その平面図がどのように立体へと展開されるかは、
平田さんの頭の中であらかじめ細かく計算されている。

しかし平田さんは制作中も、変化し続ける諸元を折り込みながら、
常に何がベストかを計算しながら氷を彫っているのである。

だから、こうやって氷を付け足したり省いたり、という
即席アレンジも自在にこなすのだ。

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平田さんが氷に不規則な動きでチェーンソーを入れている。
これは、氷を切っているのではない。
重要なのは、チェーンソーから吐き出される細かい「削り屑」だ。

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平田さんが「雪」と呼ぶこの削り屑に
水を含ませる。

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この「雪」を接着した氷の境界線にそって塗り込んでいく。
正確な手順で接着された氷であっても、
ミクロな視点で見れば、僅かに隙間が空いていたり断面が噛み合っていないことがある。
そこが荷重のかかる部分であれば、その小さな空隙が後々の破損リスクとなる恐れがある。
だから、その隙間にこの「雪」を詰め込んで凍らせてしまうことで、
より氷同士を強固に接着することができる。
いわゆる、「氷のパテ」による補強である。

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そこに、平田さんが彫った、一回り小さいタツノオトシゴの頭が組み上げられる。

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21時37分、
組み上げ完了。

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次に、本体からはみ出すようになっている板状の部分の筋彫りを深くしていく。

背景となる部分だろうか。

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タツノオトシゴの下半身部分の筋彫りも、同様に深くしていく。

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平ノミによる荒削り。
今度は大きな氷塊なので、
力仕事の度合いが増す。

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本体の中央部分に、
平田さんがチェーンソーを突き立てる。

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角度を変えながら、
細かい切れ目を入れていく。

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切れ目を入れた部分を
ノミで突き崩す。

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22時28分、
本体の氷に大きな穴が2つあいた。

.向き合ったタツノオトシゴの全貌が見えてくる。




気温はマイナス4℃まで低下。

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2人を見守る加瀬さん。

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【6】に続く

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