平田謙三 平田浩一 氷彫刻『遊泳』【1】

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第28回 国宝松本城氷彫フェスティバル 全国氷彫コンクール

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一度として同じ冬はない。

2014年1月25日。
連日の寒さがいきなり途絶えた。

松本城近くの有料駐車場に車を止め
ドアを開けた途端に、
ぬるい風が車内に吹き込む。
湿った土の匂いをはらんだ風。
春先の、雪解けの頃とよく似ている。

天気予報は今のところ的中。
この後、夜半にかけての気温は4度から8度で推移、
未明にかけては弱雨が見込まれている。

終始0度近くで行われた2年前の大会も厳しい戦いだったが、
今回はさらに、2年前とは比べ物にならないほど暖かい。
そもそも、この状況で氷彫フェスタは開催されるのだろうか。
開催されたとしても、続行不能となるのではないか。

意気込みや期待よりも
不安のほうが先に立つ。


午後5時43分。
松本城公園、本丸庭園。

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各所に並べられた沢山の角氷。

照明に電力を供給するディーゼル発電機が騒々しい音を立て、
いがらっぽい排煙を吹き上げる。

競技開始前の慌ただしさを目の当たりにして
とにかく大会がスタートすることにまず安堵する。


お堀に沿って設けられた会場の東端に、
平田さんを見つけた。

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黒いニット帽を被った平田浩一さんは
ホテルニューオータニの氷彫刻職人。
そしてその傍らには帝国ホテルの専属氷彫刻職人である父、謙三さんの姿が見える。

2年ぶりに氷彫刻師親子のタッグが実現した。



午後5時45分、競技開始。
会場設営が順調に進み、予定よりも15分前倒しのスタートとなる

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例年どおり、1チームあたり15本の角氷が提供される。
この15本をいかに使うか、
あらかじめ準備した設計図と照らしあわせて、
切り分ける寸法を決めていく。

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角氷に巻尺を当て、
センチ単位で長さを測る。

緊張感に満ちた綿密な計測作業。

一気に工具類の騒音が高まる場内の中で
平田チームにはいまだ無音の時間が流れている。

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表面処理。
角氷は一見して平滑のようでいて、表面には小さな凹凸や
分配過程での汚れが付着している。

角氷をこのまま組み上げてしまうと、
氷同士がうまく接合せず、氷彫が傾いたり
氷彫の中に汚れの筋が入ってしまうことになる。
表面処理は精密で美しい氷彫を作るために
欠かせない工程だ。

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氷の表面を慎重に確かめながら
作業が続けられる。

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午後7時。
イベントステージではお笑いライブが始まっている。

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賑やかな歓声をよそに
作業は淡々と続けられる。

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切断。

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組み上げ。

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角氷は1本の重量が135kg。
それを切断したとしてもまだ、
1個数十キロの重さがある。

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のしかかる重さに歯を食いしばりながらの作業。
彫刻というアーティスティックな響きとは裏腹に、
建築現場さながらの力仕事が要求される。

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正確な垂直を保って組み上げられる氷塊。
あの入念な下準備が
しっかりと生かされている。

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【2】に続く

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