平田謙三 平田浩一 氷彫刻『遊泳』【10】

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】

.


制作終了間近の会場。

.



完成したばかりの『遊泳』が
スポットライトに照らされている。

.



親子亀。
子ガメの首元にドライアイスが施され、
造形はしっかりと保たれている。

.



仕上がりの最終確認をする浩一さん。

.



色付き照明による、作品のライトアップが始まった。

.



平田親子渾身の作、
『遊泳』は緑色に照らされる。

.




.




.




.




.




.




.




雲が切れた夜明け前の青い空に
細い月が光っている。

あの激しかった雨が嘘のようだ。

.



氷彫界のスターとぜひ記念写真を、と
大勢の人が親子の元を訪れる。

.



カメラを前に、謙三さんが
「俺はもう疲れたヨ」と
おどけて肩を落としてみせる。

にこやかに笑う親子。

あの雨の中、
鬼気迫る形相で
氷と向き合っていた面影は
すでにない。

.



浩一さんは言う。

「正直、いつまで作品が壊れずに保つかはわからない。
だが、少しの間であったとしても
見に来てくれたお客さんに楽しんでもらえればそれでいい」

と。

その言葉を聞いて、
この親子の目指しているものが何なのか
少しだけ解った気がした。


賑わいの戻った会場。
氷彫を前に感嘆の声が上がる。


その人混みを背に
会場を後にする。

.



東の空が茜色に彩られている。

もうすぐ朝がやってくる。

.



平田謙三・浩一親子による
氷彫『遊泳』。

第28回 国宝松本城氷彫フェスティバル
全国氷彫コンクールにおいて
金賞を受賞した。

.


― 完 ―

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】



使用機材

  • EOS5D Mark III
  • EF300mm F2.8 L IS USM
  • EF70-200mm F2.8L IS II USM(一部 +EXTENDER EF2×III +Kenko R-スノークロス)
  • EF85mm F1.8 USM
  • EF50mm F1.2L USM
  • EF16-35mm F2.8L II USM

撮影後記

 会場を出た後、ボーっとした頭のまま帰宅し、朝食を食べたあと、すぐに寝入ってしまった。
 午後、目が覚めて布団から出てみると窓の外にはしんしんと雪が降っており、雨の夜の出来事が夢だったのではないかと本気で思った。
 しかしデジカメの中に残された膨大な数の写真は氷彫フェスタの開催を確かに物語っているのだった。

 パラパラ雨なら、タオルでカメラを防護する程度で対応できる。
 所詮は冬の雨、雪が溶けた程度の小糠雨だろう。
 弱雨という予報を真に受けて雨対策を軽めにして臨んだ私をあざ笑うかのように、吹き降りの雨が襲ってきた。

 傘もなければ雨ガッパもない。
 駐車場に取りに戻ることもできない。
 去年は観客にも開放されていたテントも、今年は何故か関係者専用になっており、濡らすわけにはいかない機材を抱えたまま、私は雨難民の立場に追い込まれた。

 永遠にも思えるような雨降りの時を、城門の申しわけ程度に張り出した屋根の下で、大きな門扉に背中で張り付くようにしてやり過ごした。

 音を立てて降る雨と強風の向こうに、平田親子が必死に戦っているのが見えた。
 浩一さんは大会終了後、厳しい風雨の時間について、
「あの時ばかりは気持ちが折れそうになった」
と語っている。
 私も正直なところ、この撮影を切り上げて帰宅すべきか真剣に悩んだ。
 だが、風雨に立ち向かいながら彫刻を続ける親子の姿を見ていると、そんな甘いことは言っていられないと思った。
 誰かに頼まれた撮影ではないのだけれど、一介のアマチュアカメラマンが
がむしゃらに撮っている写真にすぎないのだけれど、まだまだ突き詰めるべきことはいくらでもあると思った。

 大会終了後、ヘロヘロになっている私に浩一さんが
「大丈夫ですか、寝てないでしょ?」
と笑って声を掛けてくれた。

 いやいや浩一さんそれはこっちのセリフですよ、と思ったが、風雨をしのぎつつ時折パチパチ撮っていただけの私よりも、12時間働き通しだった平田親子のほうが傍目から見ても明らかに元気なのだった。
 恐るべき気力と体力だ。

「北海道でも大会があるので、是非見に来てください。北海道の大会ではこの2倍の氷を使って、48時間かけて彫るんです」
と浩一さん。
 なんと魅力的な大会ではないか。
 平田さんファンとしては、何としてでも足を運びたいが、そのためにはまず、体力練成から始める必要がありそうだ。
 また、新たな目標が増えた。

 松本城氷彫フェスティバルでの平田親子を追い始めて4年目になる。
 今回は、これまでの、作品が完成するまでの過程や技巧以上に、この氷彫を作る親子の人物に迫りたいと思った。
 モノクロというのも、今回が初の試みだ。
 無彩色だからこそ、際立つものがある。
 そう考えて、カラー現像のものを一旦すべて取り消して、モノクロで調整しなおした。
 その結果は、見ていただく方の評価に委ねたいと思う。

 最後に、今年も素晴らしい氷彫刻を製作された平田謙三・浩一さん親子、
大会関係者の皆様、そして、この長大な記事を御覧頂いた方へ心から感謝いたします。

2014年2月16日
信じられないような大雪の長野市にて

球 わかば

 

 

「氷彫刻」の関連記事

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。