平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』【3】

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20:00。

賑わう会場。

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気温はすでに0度を下回っている。

このまま行けば、
さらに下がるのは間違いない。

ここ数年の大会では
暖かさに泣かされることが多かった。
雨の中、氷を彫ったこともある。

気温のことを心配しなくていいというのは
精神衛生上ありがたい。

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時折手を止めて
図面を確認する平田さん。

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そしてまた
彫り進める。

人物像背後の張り出した部分を
丹念に加工する。

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加瀬さんも、
氷板の加工を着々と進めている。

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複雑な曲線を一つ一つ切り抜いていく
地道な作業だ。

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くり抜いた空間が
少しずつ拡大していく。

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言葉もなく、
彫り続ける。

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トラブル発生。
チェーンソーの刃が外れてしまった。

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主要な工作器具であるチェーンソーが
使用不能になったらこの先どうするのか、と
こちらは内心焦ったが、
平田さんは慌てる様子もなく
早業でサッと直して
すぐに作業に戻る。

毎日自分の手足のように駆使する道具なので
やはり扱いも手慣れている。

当たり前といえば当たり前だが、
その当たり前さに感心する。

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20:20。
加瀬さんが手がけていた
氷板の加工作業に一区切りがつく。

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ここで、
苦心して彫った大きな氷板を、
分割してしまう。

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平田彫刻の大きな特徴の一つは
この「分解」にある。

一般的に、
氷彫刻というのは「育って」いくものである。
時間の経過とともに
形なきところに形が現れ、
完成形に向かって、不可逆的に作業が進んでいく。

ところが、平田彫刻の場合、
一旦形を与えられた氷が
この「分解」という工程を経ることで
再び形を失うことがあるのだ。

ちょっと目を離した隙に
さっきまであったはずのパーツが見当たらない。
そういうことが、よくある。

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チェーンソーを使って、
薄い氷板を、
さらにスライスしようとしている。

原氷を2分割したこの氷板は
厚さが約13センチほどだ。
それをさらに半分にすれば
片方の厚みは約6センチあまり。

チェーンソーの刃の進め方を
わずかでも誤れば、
今までの努力が一瞬のうちに氷屑に変わってしまう。

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正確なチェーンソーさばきによって、
氷板は途中で割れることなく
無事、スライスに成功。

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20:36。
平田さんが彫っていた
人型の氷塊にノコギリが入る。

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胸から上が分割される。

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さらに胸から下も分割。

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次に
最初に積んだ大きな氷塊の上面を
平ノミで整える。

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ぬるま湯で温めたアルミ板を
氷に押し付け解かし、
断面を平滑にする。

よく見ると、最上段の氷は
直方体ではなく
向かって右側へ
微妙な傾斜がつけてある。

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その上に、先程分割した
人型の氷を積み上げる。

重さに歯を食いしばりながらの作業。

これほどの高さに人力で氷を持ち上げるには
一旦、氷塊を分割するほかはない。

分割せずに、そのまま組み上げるならば、
フォークリフトの支援を受ける必要がある。

だが、フォークリフトは諸刃の剣でもある。
利便性を得る代わりに、
相応のリスクも負わなければならない。

フォークリフトによって作業時間は確実に短縮できる。
しかし、短時間とはいえ、
作品の命運を、人の手に委ねることになる。
加えて、氷塊がより重くなることによって
位置合わせ等の微調整もより難しくなる。

平田さんがこの「分割」の手法を多用するのは
そういうリスクを可能な限り回避するためでもあるのだ。

氷彫制作の環境は、時と場所によって一変する。
現場によっては
フォークリフトの支援を受けられないこともある。
それどころか、終始一人きりの作業を
強いられることもある。

これまでそういう厳しい現場で
幾度となく氷を彫ってきた平田さんだからこそ、
スタンドアローンで完成形に持っていける
「分割」という手段を
重要視しているのかもしれない。

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氷の隙間に
水を流し込んで接着。

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続いて、胸から上のパーツを
組み上げる。

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20:56。
人型氷塊の組み上げ完了。

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作業の行方を
多くの観客が見守っている。

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― 【4】に続く ―

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