平田浩一 加瀬秀雄 氷彫刻 『Crystal Fairy』【9】

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3:00

中天に
青い月が浮かぶ。

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気温はマイナス5度を下回った。

じっとしていると
足先が冷気でジリジリと痛む。

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羽の辺縁に
小さな部品を接合する作業が
続いている。

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3:07

左羽下端の接合に入る。

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この作業も、
サッと済ますわけにはいかない。

下向きの大きな部品は
しっかり固着させないと
自重で落下する恐れがあるからだ。

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完全に平面として整えられた氷を
重ね合わせると
濡れたガラス板を重ねたときのように
お互いがピタリと吸い付く。

氷の接合では
それがベストな状況だ。

だが、
アルミ板で完全な平面を出したつもりであっても
氷の表面には
微小な凹凸や
わずかな曲面が残ってしまうことがある。

そうすると、
接着剤として接合面に流し込む水が
氷と氷の隙間を通って
外に流れ出てしまい、
いつまでたっても氷同士は融合しない。

このパーツの接合がまさにそれだった。

濡れた軍手で氷を支え続け
10分後、ようやく作業が完了。

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3:30

平田さんは
右腕の制作に入る。

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7分後、
右腕の大まかな彫刻が完了。

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すぐに本体に接合。

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落下して破損したパーツも
所定の場所に接着され
事なきを得る。

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加瀬さんが
余った氷塊に
幾筋もチェーンソーの刃を入れている。

氷のパテ(通称「雪」)の材料である
細かい砕氷を作っているのである。

加瀬さんは
常に休む間もなく
平田さんをサポートし続けている。

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再び、台座部分の加工。
切り株から張り出した何かを
削り出している。

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右腕の曲面出し。

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4:00
右腕の加工が完了。

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4:03
右羽下端の接合。

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辺縁部の接合。

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曲面出し。

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右羽の接合と同時進行で
右側の台座にも
張り出した部分を作る。

チェーンソーを使って
驚くべき速さで
氷を刻んでいく。

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平ノミでさらに削る。

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ドリルで曲面を出すと、
そこには耳を立てた
ウサギの姿が。

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4:41

制作時間も残り1時間を切ったところで
ついに完成形が見えた。

いつもに比べれば
時間的な余裕はないが
平田さんも加瀬さんも
ゴールに向け
加速度的に作業の手を速めている。

平田さんがブロワーを使って
削り屑を吹き飛ばす。

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加瀬さんが
火の点いたガスバーナーを
平田さんに手渡す。

いよいよ、仕上げ作業だ。

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4:42

ガスバーナーによる
表面処理を開始。

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削ったままの氷の表面は
工具によってできた細かい傷で埋め尽くされており
氷本来の透明感に乏しい。

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そこで、
氷を高温の炎で素早く炙ることによって
荒れた表面だけを解かし、
溶けた水が再び凍ることで
氷にガラスのような光沢と
透明感が与えられるのだ。

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平田さんの作業と並行して
加瀬さんは
機材の撤収作業に入っている。

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制作時間が終了するとすぐに、
残氷の回収と
ライトアップが始まる。

それまでに、撤収作業を
あらかた終わらせておかなければならないからだ。

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4:50

表面処理が終了。

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そのまま平田さんは
台座の仕上げへ。

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表面処理は終わったが、
平田さんは作品全体を見回し、
部分的な修正を加えていく。

最後まで妥協はしない。

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5:00

会場内には
生まれたての氷彫刻が
立ち並ぶ。

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どのチームも
最終仕上げに入っている。

制作時間は残り40分。

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いつもなら
製作終了のアナウンスが聞こえる前に
作業が全て終わっていることが多いが、
今回は
平田さんが道具を手放す様子はない。
いまだ細部の修正を続けている。

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残り約10分。

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5:40

「選手の皆さんは競技を止めてください」
制作時間終了のアナウンスが流れる。

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氷彫刻
『Crystal Fairy』
(クリスタルフェアリー:クリスタルの妖精)
完成。


激闘の12時間が
ついに終わった。


― 【10】に続く ―

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