長野県大町市 平
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厳しい冬が
やってきた。

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彼らは
懸命に

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生きている。

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命を繋いでいくため
彼らは手を伸ばす。

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そして、
食べる。

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時折、強い風が吹き
凍てつく雪を叩きつける。

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冬の山に
食べられるものは少ない。
柔らかそうな蔓でさえ
芯は固くて歯が立たない。
薄い表皮だけを
こそげて食べる。

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食べたとて
得られる栄養はごくわずか。

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だから、
食べ続けねばならない。

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食べねば
いとも簡単に
命が失われる世界だ。

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食べられそうなものは
なんでも口に入れる。

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冷たい雪を掘り起こして
笹の葉を探す。
かつては一面に生い茂っていた笹。
見向きもしなかった。

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けれど、
いまやその笹にすら
命を託すほかない。

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雪は降り積もる。
山の中にも、
自分の上にも。

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雪をしのげる
屋根はない。

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ときには体を寄せ合って
ひたすら寒さに耐える。

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体を小さく丸めて
ひたすら耐える。

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ひたすら耐えながら
春を待つ。

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子を持つ母にも
冬は来る。

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自分の命を繋ぎながら
まだ幼い命を
守らねばならない。

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寒さに震える我が子を
なだめるように、

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胸に
抱き寄せる。

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親元を離れた子ザルは
もう母のぬくもりを
頼ることはできない。

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まだ小さな彼らにも
冬は平等に
訪れる。

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だから、
慣れぬ手つきで
食べ物を探す。

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初めて味わう
得体の知れない寒さに震えながら

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懸命に
生きていくしかない。

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全身を覆う冬毛は
唯一の頼みの綱だ。

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保温のため
毛を逆立てて
全身を厚手のコートに仕上げる。
できることと言ったら
そのくらいだ。

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いつまでも枝の上にはいられない。
時には
雪中行軍を余儀なくされる。

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雪の冷たさが
手のひらに刺さる。

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でも、
進んでいくしかない。

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生きていくしかない。

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山の春は
まだずっと遠くにある。
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