長野県下高井郡木島平村穂高858 熊野山「稲泉寺」 地図
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大賀ハスが咲き誇る稲泉寺の蓮畑の一角、
寺の本堂のすぐ東側に
大賀ハスとは明らかに異なるハスが
植えられている。
そのハスの名は、
舞妃蓮(まいひれん)。

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その名のとおり
華麗で優美な花容が目を引く。

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桃色の大賀ハスの中にあって
全体的に白っぽいこのハスは
かなり異質に映る。

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だが、この舞妃蓮は
大賀ハスと
とても深い関係にあるハスなのだ。

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大賀ハスが約2000年ぶりに蘇った
1951年から15年目の
1966年。
和歌山県御坊市の阪本祐二氏が
異なる2種類のハスを交配させ
作出したのが
この「舞妃蓮」。

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その際、交配させたのが
アメリカ原産の黄花ハス「王子蓮」と、
日本の古代ハス「大賀ハス」。

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だからこの舞妃蓮は
大賀ハスと
いわば親子関係にあるハスなのである。

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黄花ハスと大賀ハスの交配で
なぜこのような花容のハスが生まれるのだろうか。
生命というものは不思議だ。

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大賀ハスは
あの日、人間の手によって
地中深くから掘り出されることがなかったら、
現代に花を咲かせることはなかった。

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そして、この舞妃蓮も
自然界では決して起こり得ない
北米大陸のハスと
日本列島のハスとの
交配によって誕生したもの。

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つまりこの舞妃蓮は
人間の営みが
生み出したハスなのである。

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数千年の時を
地中でじっと耐え続けるのもハスならば
人の手によって
瞬く間に新たな姿に変わっていくのもまた
ハスの不思議なところだ。

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数千年という大きな時の流れの中を
人間との適度な関係を保ちながら
ハスはその生命を
繋いでいく。

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二千年後の水辺。
咲き誇るハスの中に
この舞妃蓮の姿も
あったらいいな、と思う。

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そして、その傍らには
古代人たる我々に思いを馳せる
遠い子孫たちの姿が
あったらいいな、と思う。

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ハスは自ずから咲くのだけれど、
それを「美しい」と思うのは
人間だけなのだから。
遠い未来人にとっても
このハスが
美しい花であってくれたらと思う。
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