冬のニホンカモシカと恋の考察。

長野県大町市 平

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2018年
12月30日。

年末恒例になったカモシカポイントへ向かう。

ここ何回かは空振りが続いている。

この日もまた、
彼らの姿は一向に見つけられなかった。

しかし、なぜか
「今日は必ず会える」という予感が止まらない。
不思議と諦める気にならない。

そういうジリジリとした変な感覚に包まれながら
山の中を行ったり来たりすること3時間余。

発見した。


ニホンカモシカ
EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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馴染みの美しいカモシカ。

今回は、
子連れだった。

ニホンカモシカの親子
EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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子供。
まだ、顔立ちが幼い。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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しかし、幼獣といえども
体躯は立派なカモシカだ。

ニホンカモシカの幼獣
EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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母の横顔。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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母親は、山の中で私に会ったことに
ちょっと面倒臭そうな顔をして、
そそくさと先を急ぐ。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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子供は、
見慣れぬ人間を、不安と好奇心が半々な表情で凝視する。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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だが、
どんどん先に行ってしまう母親に気づくと
慌てて後を追う。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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親子は
冬枯れの木立の向こうへと
小さくなっていく。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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その親子の後から
もう1頭のカモシカが現れる。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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多分、さっきの母親に求愛中のオスだろう。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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興味深いのか、
かなりの時間私と向き合ってくれたが、
どんどん離れていくさっきの親子のことを思い出すと、
急いで後を追いかけ、
木々の向こうに消えた。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM

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12月31日、大晦日。

カモシカは雪の谷底にいた。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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今年は雪が少ないとはいえ、
急峻な斜面を下っていくことは難しく、
近づいて撮ることはできない。

遠くから観察することにする。

雪を掘り返して、
その下にある緑の草を食べている。

雪を掘り起こして採餌するニホンカモシカ
EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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今日も親子一緒に行動している。

子供が母親に近づく。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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母親の掘った雪穴に
横から顔を突っ込んで草を食べる子供。

微笑ましい光景だ。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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そしてやはり今日も、
もう1頭が行動を共にしている。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

おそらく、この「親子ともう1頭」というのは、
人間のように核家族として暮らしているわけではなくて、
メスが発情するタイミングを逃さぬよう、
オスが子連れのメスに寄り添っているからだ、と思うのだ。

オスのほうがいつもメスを追いかけるような動きになるのは、
そのためなのではないか。

そう思った理由については後述する。




母親が突然立ち止まって、
顎を突き出して何かを探っているような素振りをする。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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すると、
顔を近くの枝に何度も擦りつける。
「マーキング」だ。

野生のカモシカのマーキングを見るのは初めて。

眼下腺でマーキングするニホンカモシカ
EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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カモシカは目の下にある「眼下腺」から出る分泌液を
様々なものに擦りつけて匂いをつけ、
自分の縄張りを主張する。

ニホンカモシカの眼下腺
ニホンカモシカの眼下腺と分泌液(トリミング)

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マーキングをしたあと母親は、雪の谷底に立ったまま
微動だにしなくなってしまった。

望遠レンズを通してみると、
喉のあたりと口元が時折少し動いている。
たぶん反芻(消化のための再咀嚼)だろう。

こうやって、雪原の中にほとんど動かずに止まっている彼らは
樹木や岩と同化してしまい、遠くからはほぼ発見不可能になる。

彼らなりに編み出した防衛策でもあるのだろう。

EOS5D Mark IV + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

この冬は雪が少なく、
例年に比べて、彼らは自由に山の中を行き来できているようだ。
そのせいもあって、
彼らと遭遇できる確率も下がってしまう。

いつもよりもかなり会うのに苦労したが、
とりあえず、
元気な姿を確認できてよかった。



先述の「メスの後をオスが追従」ということについて、
9月に撮って、そのままお蔵入りになっていた写真が
参考になるかもしれないので掲載したい。



雨の日。

青々とした草むらの向こうに
大きなカモシカがいた。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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片角で、かなり歳をとった個体だ。

カモシカの角は、ニホンジカのように毎年生え変わることはない。
生まれてから死ぬまで角は伸び続ける。

だから、途中で折れてしまうと
そのまま、このように片角になることもある。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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風貌と眼光に凄味がある。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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草むらの中で、
自分の気に入った種類の草を選んで食べながら
ゆっくり斜面を登っていく。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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まとわりつく雨が鬱陶しいのか
時折、雨払いで首を振り回す。

たくさんの水滴が
辺りに飛び散る。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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ふいに、斜面を登るのをやめ
後ろを振り返るカモシカ。

何かを目で追っている。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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すると、その視線の先の草むらから、
もう1頭のカモシカが現れる。

こちらも立派な角を持った個体。
これぞカモシカという体型をしている。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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季節は秋。
カモシカの繁殖期が始まる頃だ。

この個体は、
恋したオスなのではないか。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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「恋してる」と思ったのは
この距離感を保ったまま、
ずっと後を追っているからだ。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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いつまでたっても
この変な距離感は変わらず。

この時期はまだ「片思い」のようだ。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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カモシカのオスは、
こうやって秋の早いうちからメスの後に付き従い、
メスがその気になるのを
気長に待っているのだろうと推測する。

EOS5D Mark IV + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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彼らには「ビビビ婚(死語か)」など存在しない。

長い時間をかけて
恋の距離感を
地道に縮めていくのである。

彼らの恋路に
幸多からんことを祈る。



 

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