長野県大町市 平
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春の雨が降っている。

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山中に積もっていた雪も
みるみる解けていく。

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いつもの場所で
カモシカが雨に濡れていた。

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突然の来訪者に
立ち上がって目を凝らす。

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もうお馴染みの
メスのカモシカだ。

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雨はかなりの強さで
すぐに全身がびっしょりになる。
彼女も雨が鬱陶しいのか、
しきりに身体を旋回させて雨払いしている。

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毛並みも顔立ちも鼻の艶も申し分ない。
どうやら無事に
この冬を乗り切ったらしい。

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とはいえ、
まだ緑の季節には少し間がある。
少しずつ顔を出す木々の新芽を
丹念に探して食べる日々が
もうしばらく続くのだろう。

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そして彼女は
雨の中をまた
歩き出す。

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急峻な斜面を越えていく。

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時折、何度も振り返って
谷の方を見る。

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警戒というよりも、
しきりに気にしている感じだ。
これはもしや、と思う。

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案の定、彼女の視線の先から
もう一頭のカモシカが現れた。
子供のカモシカだ。
あの仔カモシカも無事に
冬を越したらしい。

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仔カモシカは駆け足で母親のもとに駆け寄って、
顔を擦り寄せる。
まだまだ母親なしには不安な年頃なのだろう。

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そんな微笑ましい親子の姿を
久しぶりに見ることができた。
緑の季節になると、
彼らの姿を見つけるのは格段に難しくなる。
次に会えるのは
秋が深まる頃だろうか。
どうか元気でいてほしい。
ニホンザルたちも
冬越しの正念場を迎えている。

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落ち葉をしきりにひっくり返して
食べられそうな物を探している。

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春の陽に伸び始めた雑草。
貴重な緑黄色野菜だ。

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雨の中でも
食べ物探しを怠らない。
ここまで来たら
春はもうすぐなのだから。
もうひと踏ん張りなのだ。

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ひと冬の間、掘り尽くした落ち葉の中には
まだ、たまにお宝が眠っている。
運良く栗の実を発見。

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すでに遠くなった秋を味わう。

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栗の実を頬張りながらも
空いた片手はすでに
次のお宝を探している。
したたかなのだ。

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一頭の老いたサルが
遠くを見ていた。
こんな冷たい春の雨は
身体にこたえるのかもしれない。

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春はもうすぐ。

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サルたちも
一生懸命だ。
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