平田謙三 平田浩一 氷彫刻『遊泳』【6】

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分離した部品の組み上げが始まる。


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氷を分離する時だけではなく、
氷同士を接合させる時にも、
氷と氷の間にノコギリの歯を通す。

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謙三さんが角氷を削っている。
といっても、何かを造形するためではない。
チェーンソーの真下にはビニール袋が置かれ、
氷の削り屑を集めている。
重要なのは、この削り屑だ。

氷同士を接着する際、どうしても隙間の空いてしまう箇所がある。
それを放置すると、その隙間が原因で、
氷彫が変形したり、最悪の場合には崩壊する危険が出てくる。

そこで、
氷の削り屑に水を加えた、いわゆる「氷のパテ」を作り、
氷の隙間に塗りこむのである。

隙間に入り込んだパテはやがて周囲の冷気によって再氷結して、
氷同士をより強固に接着するのである。

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氷のパテを塗りこんだ後に、
コールドスプレーを吹きかける。
周囲の冷気に依らず、パテは一瞬のうちに氷結する。

コールドスプレーという「氷の瞬間接着剤」。
平田親子の必殺技だ。

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午後11時。

雨が少しずつ強くなってきている。

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高さを増す氷彫。
組み上げは最終段階に入る。

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ここで、ついにフォークリフトが使われることになった。
気温の高さや、氷の強度を考えてのことだろう。

謙三さんは荷台の上に、
浩一さんは本体の後ろで部品を待ち受ける。

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浩一さんが乗っているのは
三段重ねのビール箱。
少しの体重移動でグラグラと揺れ動く。

心配そうに見守る観衆。
緊張感が一気に高まる。

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無事に組み上げが完了。

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午後11時30分。
本降り。

どこからどう見ても、もう「弱雨」というレベルではない。

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しかし、

大会中止のコールはない。

作業の手を止めるチームもない。

平田親子も組み上げのため、
氷に張り付いたままだ。

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言葉はない。

工具と降りしきる雨の音だけが聞こえる。

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午後11時42分。

組み上げ作業完了。

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氷彫制作は折り返し地点に差し掛かる。



【7】に続く

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