ボーイング747LCF 「ドリームリフター」 / Boeing747LCF “Dream Lifter”

ドリームリフターフライト情報

 

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2014年1月5日。
長野県安曇野市。

この日、私はいつもの場所で
白鳥を撮っていた。
冬晴れの
空がよく澄んだ日だった。

午後のまだ青々とした空には
少し太めの三日月が浮かんでいた。

撮影の合間に私がふと顔を上げると
月からやや離れた場所を
白いものがゆっくりと動いているのが見えた。

紡錘形の機体、
風に漂うような緩慢な速度。

直感的に
「飛行船だ!」
と思った。


三日月と高空のドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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しかし、飛行船にしては高度が高すぎる。
だとしたら、思ったほどゆっくりではなさそうだ。

手持ちのズームを目一杯延ばし
何枚か写真を撮って
急いでプレビュー画面で拡大した。

高空を行くドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

. 大きな翼と
4つのエンジン。

紛れもなくそれは
飛行機であった。

しかし、こんな寸胴な飛行機は見たことがない。
こんなでかいものが空を飛ぶとは。

その日以来、
この巨大な飛行船モドキのことが
頭の隅っこに引っ掛かって
取れなくなってしまった。

それが
ボーイング747LCF
「ドリームリフター」
との出会いだった。





ボーイング747LCF(Large Cargo Freighter = 大型貨物輸送機 )

ボーイングの新世代旅客機B787は、機体に従来の金属とは異なる炭素繊維複合材料が
多量に用いられており、機体の約35%を日本企業が製造、納入している。
その内訳は
主翼・・・三菱重工
前方胴体・・・川崎重工
中央翼・主脚格納庫・・・富士重工
が担当。

これら日本で製造される787の巨大なパーツを
中部国際空港(セントレア)から
ボーイング社の組み立て工場がある
アメリカ・ワシントン州エバレット工場および
サウスカロライナ州チャールストン工場に空輸するための
部品専用輸送機がこのLCFなのである。

B787は「ドリームライナー」という愛称がつけられているのに対し、
このLCFにつけられたのは「ドリームリフター」。

B787の月産10機(現在)に合わせ、
頻繁にセントレアに飛来している。



2014年5月2日。
17時8分。

愛知県常滑市
中部国際空港(セントレア)。

RWY36 on final。
(36番滑走路最終進入)

セントレア南上空に姿を現したLCF。
伊勢湾に浮かぶ空港島を目指して最終進入を続ける。

EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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肉眼でもその姿をはっきり捉えられる距離に入った。
あの特徴的な寸胴体型。
遠目にも他の旅客機とは異質な巨大さが見て取れる。

アプローチ中のドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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着陸寸前。

滑走路脇に止められた空港保守の車両が
小箱のようだ。

その巨体ゆえに
かなりゆっくりとした速度に見えるが
実際は時速200キロを超える速さで飛んでいる。

ランディング間近のドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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タッチダウン。

ドリームリフターのランディング瞬間
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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世界で運行されているLCFは全4機。
B787生産に合わせ、
中古のB747-400型機を改造したものだ。

この日、セントレアに飛来したLCFは機番「N718BA」。
改造前はマレーシア航空で使われていた。
改造後初飛行は2010年。
LCF4番機にあたる最も新しい機体だ。

駐機スポットへ向けタキシングするドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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LCF諸元(カッコ内はベースになったB747-400の値)

全長: 71.68m ←(70.6m)
全幅: 64.4m (変更なし)
全高:21.54m ←(19.4m)
胴体幅:8.38m ←(6.5m)

ただでさえ巨大な747-400型機を
さらに無理やりサイズアップしているのがわかる。

ちなみに、機体を無理やり拡張したせいで、
最大離陸重量や燃料搭載量、航続距離などは若干犠牲になっている。

タキシング中のドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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正面からの図。
747に衣をつけて揚げたみたいな形だ。
個人的には「ジャンボフリッター」と呼びたい感がある。

ドリームリフター正面
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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この日、セントレアで撮影した
デルタ航空のB747-400型機の正面図。
これが改造前、オリジナルの形。
ぱっと見、信じがたい。

B747機体正面
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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誘導路を進むLCF。

タキシング中のドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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機首にはボーイング社のロゴマークが。
その後ろには「Oparated by ATLAS AIR」の文字。

その表記のとおり、LCFはアメリカのアトラス航空が
ボーイング社から委託を受けて運行している。

ボーイング所有の機体なのだが、航空機としての扱いはアトラス航空所属機となり、
コールサインもアトラス航空のそれとなる。

ちなみに、アトラス航空のコールサインは「GIANT(ジャイアント=巨人)」。
LCFの巨大な機体が、巨人を名乗りながら飛んでいるのが、
偶然とはいえ面白い。

ドリームリフターの機首
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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胴体側面には
「ドリームリフター」のロゴ。

787の「DREAM LINER」と書体も月のマークも一緒である。
LINERの「N」が「FT」になっただけ。
ロゴデザイナーに優しいネーミングなのである。

そうは言っても、
このシンプルでカッコいいロゴ、
大好きだ。

機体側面に描かれたドリームリフターのロゴ
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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機体後部には2つの大きなヒンジ(ちょうつがい)が見える。
このヒンジこそ、LCFのキモなのだが、
これがどう機能するかについては後々・・・。

EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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セントレア島の南端に
ボーイングのロゴが掲げられた
大きな建物がある。

この建物は
DOC(ドリームライナー・オペレーションズ・センター)
と呼ばれ、
LCFで空輸する部品を一時保管する格納庫で、
2014年3月に運用が開始された。

各社で製造した部品は、
海上輸送でこのセントレア島に直接陸揚げされ、
このDOCに搬入、
保管した上でLCFでの空輸を待つこととなる。

セントレア島のDOC(ドリームライナー・オペレーションズ・センター)
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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LCFの駐機スポット横には
黒色のビニールで厳重に梱包された貨物がスタンバイされている。
これがLCFが運ぶことになる787の部品だ。

左から円筒形をした前部胴体(川崎重工)
中央翼(富士重工)が2つ(2機分)。

これがLCF1回の飛行で輸送される貨物である。

ちなみに、1回で輸送できる部品の組み合わせとしては
今回の「前部胴体×1+中央翼×2」の他に、
「前部胴体×2+中央翼×1」
「主翼(三菱重工)2枚(1セット)」
があるそうだ。

部品といえどもその一つ一つがでかいので、
巨大なLCFでもこれが限界なのである。

駐機場でスタンバイするドリームリフターの貨物
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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17時19分。

駐機スポットにLCFが到着した。
この後、入念な準備を経て
数時間に及ぶ積み込み作業が開始される・・・
のだが、
長野までの道のりを考えると、
そろそろ家路につかなければならない。

後ろ髪を引かれる思いで
スカイデッキを後にする。

駐機スポットに入るドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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18時30分。
セントレア臨時駐車場。

駐車場のフェンス越しに
貨物積み込み作業が始まっているのが見えた。

機体後部の大きなヒンジを支点に
胴体が真っ二つにして、
その開口部から貨物を搬入するのだ。

ジャンボ機の胴体がボッキリ折れているというのは
かなり衝撃的な光景だ。

尾部の下にいる黄色の作業車は
MTS(Mobile Tail Supports)。

開口作業と、搬入中に機体がバランスを崩さぬよう
支える役割を担った車両である。

貨物室のハッチを開けるドリームリフター
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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貨物は専用の運搬車
LCL( Large Cargo Loader )
に載せられている。
LCLの端に乗った作業員と見比べると
貨物の巨大さがわかる。

ドリームリフター専用貨物運搬車LCL( Large Cargo Loader )
EOS5D Mark III + EF70-200mm F2.8L IS II USM + EXTENDER EF2×III

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ポッカリと口を開いた貨物室は
巨大洞窟の入口のように見える。

EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM

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非常にゆっくりとした速度で
慎重に作業が続けられている。

18時49分。

車のタイヤの上に直立した格好で
手持ちで撮ることができるのも
そろそろ限界の明るさに近づいている。

積み込み作業を横目に
今度こそ
セントレアを後にする。

おそらくこの機体は
夜半近くにセントレアを発ち
9時間後にはエバレットにたどり着くはずだ。

その長い空の旅の無事を祈ろう。

ドリームリフターへの貨物搬入
EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM

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その後の話。

LCFとの最初の出会いは
あまりにも唐突で
間に合わせの装備で撮らざるをえなかった。

だから、いつか完全装備で雪辱を果たしたかった。

しかし、こちらが準備万端整えるほど
思うように事が運んでくれないのが世の常なのだ。

LCFが日本に飛来する際の飛行ルートは2パターンある。

シアトル近郊のエバレットを飛び立ち、
北米大陸西岸沿いに北上、
アリューシャン列島を経て
北海道東沖から岩手県太平洋岸に至る。
ここまではいつもだいたい同じだ。

日本到着が夜間や早朝で
羽田や成田の空域が比較的空いている場合、
LCFは、盛岡沖から太平洋岸を南下して
直接セントレアに降りてしまう。
こうなってしまうと、いくら待っていても
長野上空にLCFは現れてくれない。

一方、昼間の時間帯に飛来した場合は
混雑する関東上空を避け、
盛岡沖から一旦新潟上空を経由して
セントレアに針路を取る。
この時、LCFはちょうど長野の直上を通過するのだ。

ずっと、その瞬間を待ち続けた。
だが、なかなか機会には恵まれない。

Flightradarの画面で、
北米からずっと追い続けたLCFに
幾度となく盛岡沖でそっぽを向かれた。

またある時は、厚い雲の上を
音だけを残して飛び去っていった。

そしてまたある時は
カメラを持ち合わせていない時を狙うようにして
意気揚々と私の頭上を遠ざかっていった。


つくづく空をゆくLCFには縁がないな、
と思い始めた頃、
ようやくその時はやって来た。

iOSアプリ「flightradar24」画面 GTI4512の飛行経路

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2014年5月16日 17:50
長野市上空

Boeing747LCF "Dream Lifter"
GTI4512 / N747BC
PAE→NGO (ボーイング社エバレット工場→中部国際空港)
38800ft (≒12000m)
450kts (≒830km/h)

雲の隙間から現れたドリームリフター
EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM

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雲の合間から姿を見せたLCF。

EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM

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やはり寸胴で
飛行船のようだった。

高空を遠ざかるドリームリフター
EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM

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不格好なのだけれど、
なぜか私はこの機体が好きだ。

EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM

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それは、
LCFがその名のとおり、
その巨体に「夢」をたらふく詰め込んでいる、
そんな気がするからなのかもしれない。

EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM

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5月25日追記
なんだかんだでまた撮れました。
ロゴもかろうじて見えます。

高空を飛行するドリームリフター(横下方から撮影)
EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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2014年5月23日 18時38分 長野県上水内郡小川村
Boeing747LCF "Dream Lifter"
GTI4512 / N718BA
(セントレアで撮ったのと同じ機体)
長野市上空 約3万フィート



12月23日追記
飛行機雲を曳くLCFが撮れました。

2014年12月23日 15時48分
長野市上空 高度3万6千フィート(≒1万1千メートル)
387ノット(≒780km/h)
GTI4512 / N780BA

飛行機雲をひくドリームリフター
EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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飛行機雲をひくドリームリフター(拡大)
EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III(トリミング)

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飛行機雲をひくドリームリフター
EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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EOS5D Mark III + EF500mm F4 L IS USM + EXTENDER EF2×III

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2015年3月1日追記
上空ですれ違うLCF(Flightradar24から)。
世界で4機しかいないLCFが日本上空ですれ違うという超レアな場面。
この頃、LCFの飛来頻度が上がっている気がします。
増産に拍車がかかっているのかな?

2015年3月1日 13時17分
B747LCF 機番N747BC と N249BA

WEB版flightradar24画面。上空ですれ違うドリームリフター

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ドリームリフターの運行スケジュールを知る方法


ドリームリフターは旅客を輸送する定期便ではないので、
運行は不定期かつ、スケジュールも一般には公開されておらず、
一般的なエアラインのように時刻表を参考にした撮影はできませんが、
インターネットを活用した待ち伏せの方法がありますので紹介します。


まず、セントレアを離発着するドリームリフターの便名は4種類5種類6種類あります。

GTI4512 (   セントレア行きの便    )
GTI4516 (      同 上       )
GTI4352 (      同 上       )
GTI4131 (   セントレア発の便     )
GTI4136 (       同 上      )
GTI4151 (       同 上       )

上記のとおり、セントレアに飛来するドリームリフターは
便名が「GTI4512」か「GTI4516」または「GTI4352」と決まっています。

このドリームリフターは、
アメリカワシントン州にある、ボーイング社のエバレット工場から飛んできます。
(まれに、アラスカのアンカレッジ空港に寄り道することもある)
アメリカを飛び立って、セントレアに着陸するまでの所要時間は
おおよそ10時間。

ですから、ドリームリフターが離陸したことを知ることができれば、
10時間後のセントレアで待ち伏せすることが可能なのです。

そこで、FlightAwareというサイトを利用します。

GTI4512の運行状況(リンク)
GTI4516の運行状況(リンク)
GTI4352の運行状況(リンク)
このサイトで、セントレア行きのドリームリフターが現在飛行しているかどうか、
飛行していれば、現在位置と予想到着時間が分かります。
たまに、飛行予定もわかる時があります。

ちなみに、
着陸したドリームリフターは、直ちに貨物の搭載を開始して、
通常は数時間のうちにセントレアを離陸していきます。

離陸便の運行状況のリンクも参考までに載せておきます。

GTI4131の運行状況(リンク)
GTI4136の運行状況(リンク)
GTI4151の運行状況(リンク)



参考動画 「ボーイング787ができるまで」

ドリームリフターも大活躍してます。


~参考リンク~
・ ボーイング747-400「LCF型」・・・Wikipedia(日本語)
・ Boeing 747 Large Cargo Freighter・・・Wikipedia(英語)
・ 【レポート】ボーイング社、ドリームリフター・オペレーションズ・センターを開設・・・マイナビニュース
・ Flightradar24(運行中の航空機リアルタイム表示)