セミの羽化を撮る

自宅の庭にて





今回は、
セミの羽化に関する
リアルな記録です。
昆虫嫌いの方はご遠慮ください。

でも、
かなり美しく撮れていると
手前味噌ながら思います。










・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

自宅の庭。

桜の木の根本にこの夏、
いくつもの穴が出現した。

この穴、
セミの幼虫が這い出してきた穴なのだ。

セミの幼虫は
卵から孵ってすぐに地中へと潜り、
木の根から養分を吸収して成長する。
その期間はおよそ6、7年と言われている。

「言われている」というのは
彼らが地中生活者であることと、
飼育が難しいことなどから、
まだ彼らの地中での生活が
よく分かっていないからなのだ。

セミが地上に出てきた穴
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM




午後9時過ぎ。

庭を見に行ったら
コンクリートの犬走りの上を
ヨタヨタ歩いている
セミの幼虫を見つけた。

その先に登れる場所はないよ、と
傍らに落ちていた桜の小枝を差し出すと
セミの幼虫は
「あ、登れる場所あった」
とばかりに
桜の枝につかまる。

そしてそのまま、
羽化の態勢に入ってしまった。

せっかくなので、
撮影させてもらうことにする。

羽化直前のセミの幼虫
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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羽化直前の幼虫。

セミの俊敏さは微塵もなく、
とにかく動きが遅い。
何をやるにもノソノソしている。

しかし、
よく考えてみればそれも無理はない。
茶色い外殻の下にはもう、
セミの身体が入っている。

人間で言えば
宇宙服を着て歩いているようなもので、
動作が緩慢になるのも仕方ないのだ。

午後9時50分。

枝の中ほどで
幼虫が動きを止める。

時折、身体を縮めたり
伸ばしたりを繰り返す。


羽化直前のセミの幼虫
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後9時55分。
羽化開始。

背中が割れ、
セミの身体が現れる。

セミの羽化(羽化開始から5分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後9時57分。

背中の割れはさらに拡大。



セミの羽化(羽化開始から7分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時。

背中の割れ目から
少しずつ
セミの身体が押し出される。

美しいヒスイ色。



セミの羽化(羽化開始から10分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時3分。

眼が現れ始める。



セミの羽化(羽化開始から13分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時4分。
1分ほどで眼の部分が
脱皮完了。

セミの羽化(羽化開始から14分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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10時5分。

上半身を脱皮し、
さらに脚を抜きにかかる。


セミの羽化(羽化開始から15分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時7分。


セミの羽化(羽化開始から17分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時10分。

上半身が殻から大きくせり出す。

体側には伸張前の羽が見える。


セミの羽化(羽化開始から20分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時17分。

尾を残し、

のけぞるような姿勢で
動きが止まる。

そして、
じっとしたまま
動こうとしない。

羽化は失敗か。


セミの羽化(羽化開始から27分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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のけぞったまま15分が経過。

午後10時32分。

突然、驚異の腹筋力で身体を起こし、
自分の抜け殻につかまる。

羽化は失敗してはいなかった。

よく考えてみれば、
殻から抜いたばかりの脚は
まだ柔らかく強度が足りない。

彼はのけぞった姿勢のまま
脚が固まるのを待っていたのだ、
と気づく。

誰かに教えられることもなく、
こういう複雑な手順を踏むセミに
感心する。


セミの羽化(羽化開始から42分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時33分。

脚でつかまった時点で、
残っていた尾部分を殻から抜き去る。

殻からぶら下がった状態になると、
すぐに羽の伸張を始める。

翅脈(羽の筋)に体液を送り込んで
羽をまっすぐ伸ばしていく。


セミの羽化(羽化開始から43分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時36分。

羽が開いてくる。

殻の中に
あれほど小さくたたまれていた羽。

もう少しゆっくり広がっていくのだと思ったら
かなりのスピードなのだ。

セミの羽化(羽化開始から46分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時37分。
前の写真から1分後。

明らかに羽が伸びている。



セミの羽化(羽化開始から47分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時39分。



セミの羽化(羽化開始から49分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時41分。

羽の伸張がほぼ終了。

羽の表面には
薄っすらと畳みジワが見える。


セミの羽化(羽化開始から51分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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逆光で撮影。



セミの羽化(羽化開始から53分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後10時45分。

動かなくなる。

脱皮したてで
全身がまだ柔らかく
飛び立つことはできない。

このままじっとして
身体の強度が高まるのを待つ。


セミの羽化(羽化開始から55分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後11時7分。

前脚だけで殻からぶら下がり、
他の細い脚は空中に泳がせている。
これも強度確保の一環だろう。


セミの羽化(羽化開始から77分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後11時35分。

羽の透明感が増している。



セミの羽化(羽化開始から105分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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前脚でしっかりと殻を掴んでいる。



抜け殻にぶら下がる羽化直後のセミ
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後11時39分。

殻から枝に移動。

脚の強度も
高まってきたようだ。


セミの羽化(羽化開始から109分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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午後11時40分。

脱皮開始から110分。

体の模様から
ヒグラシであることがわかる。

夏の夕暮れ、
あの物悲しい声で
カナカナとなくセミだ。

羽化したてのヒグラシの
このヒスイ色は本当に美しい。


セミの羽化(羽化開始から110分経過)
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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撮影はここで終了。

庭の片隅に
枝ごとそっと移した。

明日の朝には
身体が固まって
飛べるようになるだろう。



翌日、
桜の小枝には
抜け殻が残されていた。

殻の主は
もういなかった。

それでも抜け殻は
しっかりと枝を掴んで離さなかった。

セミの抜け殻
EOS5D Mark IV + EF100mm F2.8L Macro IS USM + ストロボ + ソフトボックス

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あとがき

初めて、セミの羽化を目の当たりにしました。
我が家の庭は本当にセミが多く発生して、
朝になると桜の枝にセミの抜け殻が沢山ついているので、
いつかは羽化をちゃんと見てみたいと思っていましたが、
意外と早く実現しました。

子供の頃はもう昆虫少年でしたが、
こんなに虫をつぶさに観察することは久しぶりで、
忘れていたワクワク感を味わいました。

小さな虫ですが、
生きていくための知恵とか力強さがあって
感心させられました。

そして、とにかく
あのヒスイ色が美しく、
美術品のようでした。

こうやって
長い地中生活の末に地上に出てきたセミも、
羽化直後に鳥の朝ごはんにされてしまうのもけっこういて、
なんともやるせない気持ちになります。

鳥だって必死に生きているので
仕方はないんですが。

自然の中で休むことなく繰り返される、
そういう「命のやり取り」を
人間は都合よく忘れてしまっているのかも、と思います。

小さなセミが生きる姿に
そんなことを考えたりしました。