
自ら手放したものと、指の隙間からこぼれ落ちていったものとでは、失ったことの意味合いがまるで違う。
破談の後、私は少しずつ日常を取り戻してはいったが、心の中では、まるで過去を諦められずにいた。
あの時、違う行動をしていたら、もっと幸せな世界に暮らせていたのではないか。
どこかで致命的な選択をしてしまったのではないのか。
今の現実が受け入れがたいものであればあるほど、辿ってきた人生にタラレバの分岐が幻のように現れ、永久に答の出ない反省会が繰り返される。
このままではいけない、と前に進もうとする。
でも、どこに進んでいけばいいのかも分からない。
何度か、お見合いもした。
合コンで知り合った人もいた。
だけど、前には進めなかった。
何も成就しない日々。
己の無力感だけが育っていく。
霧の中を歩いているようだ。
どこに向かっているのかも分からない。
帰るべき道も分からない。
ついには霧と同化して、自分自身の輪郭さえ朧げになっていく気がした。
それは、かつて味わった気持ちと同じだった。
無為な時間を重ねるだけで終わる人生への恐怖が、再び足元から這い上がってくる。
何か気を紛らわせなければ、どうにかなってしまいそうだった。
ふと、部屋の隅で置物と化していたカメラに目が留まった。
もう一度、本気で撮ってみようかな、と思った。
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