霧中 【ブログ前日譚3】

EOS5D Mark IV + SIGMA 24-70 F2.8 DG OS HSM

 自ら手放したものと、指の隙間からこぼれ落ちていったものとでは、失ったことの意味合いがまるで違う。

 破談の後、私は少しずつ日常を取り戻してはいったが、心の中では、まるで過去を諦められずにいた。

 あの時、違う行動をしていたら、もっと幸せな世界に暮らせていたのではないか。
 どこかで致命的な選択をしてしまったのではないのか。
 今の現実が受け入れがたいものであればあるほど、辿ってきた人生にタラレバの分岐が幻のように現れ、永久に答の出ない反省会が繰り返される。

 このままではいけない、と前に進もうとする。
 でも、どこに進んでいけばいいのかも分からない。

 何度か、お見合いもした。
 合コンで知り合った人もいた。
 だけど、前には進めなかった。
 何も成就しない日々。
 己の無力感だけが育っていく。

 霧の中を歩いているようだ。

 どこに向かっているのかも分からない。
 帰るべき道も分からない。
 ついには霧と同化して、自分自身の輪郭さえ朧げになっていく気がした。

 それは、かつて味わった気持ちと同じだった。
 無為な時間を重ねるだけで終わる人生への恐怖が、再び足元から這い上がってくる。
 何か気を紛らわせなければ、どうにかなってしまいそうだった。

 ふと、部屋の隅で置物と化していたカメラに目が留まった。

 もう一度、本気で撮ってみようかな、と思った。

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写真を始めたきっかけとその後の話