長野県大町市平
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山道で1頭のニホンザルに出会った。
体格のいい雄ザル。
この風格からして群の頭領だろうか。
だが、周りに仲間が見当たらない。
どうやら、
何らかの理由で群を去った
「はぐれ雄ザル」らしい。
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雄ザルは
私がいることを十分認識しながらも、
さぞ興味なさそうに
そっぽを向いて通り過ぎる。
喧嘩をしかけられるのも嫌だが、
無視されるのも、ちょっとだけ淋しい。

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それからまたしばらく山道を歩くと、
静かな木立の中から
「カリッ、カリッ」と
やたらと尖った音が響いてくる。
なんの音かと辺りを見回すと、
すぐそこで
さっきすれ違った雄ザルが
枯れ葉の上に座って何かを食っている。

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手には拾った栗の実。

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手と前歯で上手に皮を取り除きながら
一生懸命に食べている。
さっきのカリカリ音は
硬い栗の皮を前歯で剥いている音だった。

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すぐ近くに人間がいるというのに
栗に夢中なのか、
相変わらず私のことは一向に気にしていない。

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これから始まる長い冬を耐えるだけの
エネルギー備蓄が至上命題なのだろうが、
ガン無視を決め込まれると、
こちらとしては、ちょっと淋しい。

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たぶん、このオスが群を率いていたなら、
私を群れに近づけないよう、
すぐに前歯を剥いて威嚇してきたはずだ。
こんなに間合いを詰めることなど
決して許さなかったに違いない。

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だけどこうして群を離れて独りになってしまうと、
そういうことは
どうでもよくなってしまうらしい。
背負うものがなくなって、
悠々自適モードに入ったのだろう。

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ということは、
サルはサルで人知れず、
いろいろ背負って生きているのかもしれないな、とも思う。

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そう考えると、
この雄ザルが
なんとなく男前に見えたりするのだ。

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そうは言っても、
丸めた背中には、
独り身の哀愁もかすかに漂う。

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山栗を貪り食いながら、
いつか群のトップに返り咲いてやるかんな、
と思っているのか、それとも
俺はこのまま独りで好きに暮らすんだもんね、
と思っているのか。

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サルの心中を推し量るのは難しいが、
食事を済ませた彼は
また背筋をピンと伸ばして、
目の前の斜面を上っていく。

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決して振り返らず、
黙々と歩を進める。

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そうか。
男は背中で語るのだ。
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