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午前4時。
残りあと1時間。
気温はついに
マイナス8℃を下回る。
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氷像にはまだ未彫刻の場所がかなりある。
平田さんが千手観音の如く道具を持ち替えながら
恐ろしい速さで氷を削っていく。

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全身に降り積もる氷粉を振り払うこともなく、
さながら、猛吹雪からの帰還者という出で立ち。

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藤原さんに新たな動き。
氷像の表面にまん丸に削った氷を取り付け始める。

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それは、
流れに漂う水泡。

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数個だけかと思ったら、
山程の氷珠が登場する。

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残り45分。
ついに平田さんがブロワーとブラシを使って
仕上げ作業に入る。

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それを待ちかねていたように、
加瀬さんが取り出したのはガスバーナー。

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ガスバーナーに取り付けるガスボンベは、
冷えてガスが出にくくなるのを防ぐため、
車の中で別に保温しておいたのだという。

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バーナーに点火して平田さんに差し出すと、
流れるような動きで平田さんはそれを受け取る。
リレーのバトン受け渡しの如く息はぴったりだ。

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炎に当たった部分が、みるみる変化していく。
瞬間的に熱を加えることで表面の凹凸が解け、
それが再び凍るとガラスのような透明感が出る。

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氷を炎で炙って大丈夫なのかと一瞬不安になるが、
氷の特性上、全く問題はないのである。
0℃の氷を0℃の水にするための熱量と
0℃の水を80℃のお湯にするための熱量は等しい。
つまり、そもそも氷は想像以上に「解けにくい」のだ。
だから、こういう仕上げが可能になる。

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藤原さんは並行して
氷珠散りばめ作業を続行。
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残り30分。
なんと平田さんが新たな作業に入る。
ガスバーナーで仕上がりではなかった。
背景部分に特殊なドリルビットで
微細な水泡を次々と彫り込んでいく。

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各チーム、ともにラストスパート。

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ガスボンベを付け替えたバーナーが手渡される。
マラソンの給水所のような流れ作業。
平田さんの目は完成だけを見ている。

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氷像の裏表をまんべんなく表面処理。

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残り10分。
まだ終わらない。
仕上げ後も、全体を見て
気になった場所を徹底的に直す。
それは時間ギリギリまで続く。

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残り2分。
最後の力を振り絞って
大ノミで台座部分をクリーニング。

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午前5時。
作業終了がコールされる。
ついに終わった。

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平田浩一・藤原康二・作
『琉金』
完成。

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完成の余韻に浸る間もなく
すぐに撤収作業に入る。

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時間を凍らせたような氷像たちとは対照的に
場内は騒然とした動きに包まれる。

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恒例のカラーライトアップに向け、
観客エリアに人の壁が育ち始めた。

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不眠不休で疲れが蓄積された身体に鞭打って
機材を片付け続けなければならない。

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機材を搬出。

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午前6時。
カラー照明によるライトアップが始まった。

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会場が最も賑わう時間。

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色とりどりの氷像を前に
観客は歓声を上げている。
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