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17時18分。
気温1.9度。
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ノミによって大まかな形を出したところで
棒状のグラインダーを使って
さらに滑らかな曲面を出していく。

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小林さんと平田さんの
ダブルチェーンソーで
下半身及び台座部分へ手を入れる。

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17時30分。
マジックアワーの空に佇む
氷の馬。

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松本市中心部の橋の上。
育っていく氷像の前を
帰宅ラッシュの人と車が行き交う。
なんとも現実離れした光景。

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小林さんは馬の下半身を支える
台座部分への彫刻。
大型の三角ノミで
放射状の線を刻んでいる。
こういう正確で均一な直線を
一気に彫っていけるのは
小林さんの熟練の証だ。

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作業は次なる局面へ。
あらかじめ加工、保管されていた
板状の部品。

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さらに厚みを削いでいく。

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縁の部分にチェーンソーで切れ目を入れる。

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明らかな翼の形。

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さらに薄く、形を整えていく。

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翼の断面にアルミ板を押し当て
接着の準備に入る。

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鏡面に仕上がった断面。

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右翼の接着。

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極力薄くしたとはいえ、
かなりの重量がある上に、
傾斜した場所に接着するため
より慎重さが求められる。

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接着面に水を流し込み、
氷同士が固着するまで
動かさぬようじっと耐える。
滑らないように湿らせた軍手を通して
氷の冷たさが手に突き刺さるが、
ここで手を離すわけにはいかない。

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固定に通常の何倍もの時間をかけ、
なんとか接着の感触を得た平田さんは、
支えていた手を氷からそっと離す。
翼はその場に留まっている。
と思った次の瞬間、
接着面から翼が剥離して落下する。
咄嗟に翼を肩で受け止める平田さん。

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「今回は使わないかと思って、小さいアルミ板と
コールドスプレーを持ってこなかったんですよ」
平田さん曰く、
小さな接着面を大きなアルミ板で処理すると、
押し当てる過程で板がブレることで、
接着面にわずかな起伏ができる。
結果として、接合した部分に隙間ができて
完全に接着ができないのだそうだ。
大きな接着面には大きなアルミ板。
小さな接着面には小型のアルミ板。
大は小を兼ねないのだ。
また、重い部品を支えるだけの強度を得るためには、
接着箇所を素早くしっかりと凍らせることが重要だ。
そのために平田さんはコールドスプレーを使う。
しかし、今夜は冷え込みが予想されたこともあって、
コールドスプレーも手元になかった。
「ちょっと宿に戻って取ってきますんで」
そう言い残して、平田さんは夜の松本の街に消えた。

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15分後、平田さんは件の道具を携えて戻ってきた。

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接着面にかかる負荷を軽減するため、
さらに翼を薄く、軽くする。

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そして、小さいアルミ板での処理。

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翼の固定と同時に、
接着箇所の周囲をコールドスプレーで急冷する。

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18時42分、
まず、左翼の接着が完了。

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すぐに右翼の接着。

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18時48分、
右翼も無事接着された。
見まごうことなきペガサスが出現する。

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すぐさま翼の根元部分に
羽を彫り込む作業に入る。

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まもなく19時。
予想以上に本格的な制作作業が続く。
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