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平田さんが彫っていた虎が分解される。
平田流彫刻名物「分割積み上げ」開始の合図だ。

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分割されると
急に彫刻としての存在感を失って
なんの物体なのかわからなくなる。

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さっきまで尻尾だったはずの物体。

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土台の上に、
下の部分から順に積み上げていく。

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重いものは3人がかりで。

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中段まで積み上がった。

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頭部。
細かい彫刻が入っているので
細心の注意を払う。

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位置を微調整。

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位置が決まると、
藤原さんが氷の隙間に
水を流し込んで接着完了。

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すべての氷が一つになった。
大きなパーツを組み上げるため、
制作現場の横でフォークリフトが待機していたが、
結局、人力だけで積み上げた。

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平田さんはチェーンソーに持ち替えて
土台部分を削っていく。
盛大に砕氷が飛び散る。

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藤原さんは平ノミで切削。

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平田さんが虎の背中の溝に
「雪」を擦り込む。

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トラ特有の模様が浮かび上がった。

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チェーンソーの刃が外れた。
加瀬さんがすかさずサポートに入る。
加瀬さんも氷彫刻の道具として
チェーンソーを使い慣れているから
こういう修理もお手のものだ。

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制作開始から4時間半あまり。
気温はさらに下がって、マイナス4.6℃。
作業が終わる気配はまだない。

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20:20。
平田さんがグラインダーを手に取る。
虎の体表を滑らかにする。

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細いドリルで細かい場所に手を入れていく。

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牙の修正。
虎の歯科治療をしているかの如し。

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いよいよ佳境に入ったと思しき彫刻作業を
夢中で撮っていると、
ふいに平田さんから声がかかる。
「わかばさん! 終わりです終わり、完成!」
そこには、岩の上で咆哮する氷の虎がいた。

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20:30。
制作開始からおよそ5時間。
氷彫刻「虎」完成。
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投光機の光を受けて光っている。
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頭の形、身体の曲線、脚の太さ、
虎の特徴がよく出ている。
そして、この躍動感。
生きものを得意とする平田さんらしい作風だ。
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表側。
「雪」を溝に擦り込むことで、
体表の模様を表現している。
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この虎は特別展示作品として、
日曜の昼まで展示されることになる。
コンテストでの平田作品と違い、
この「虎」は展示期間中に、
その造形を「保たせる」ことに重きを置いている。
微細な彫刻や、高度な表面処理を省略しているのはそのためだ。
松本城公園の入口を入って
突き当りの場所に置かれたこの「虎」。
作品名や制作者が書かれたプレートが掲げられることはなく、
この虎が「チーム平田」の作であることを知る人は少ない。

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作品が完成するや否や、
手早く撤収作業を進める3人。
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5時間の大仕事を終えたものの、
感慨にふけっている暇はない。
あと十数時間後には
「チャンピオンシップ」が始まる。
そう、明日こそが本番なのだ。
いや、本番前日なのに
極寒の中、
こんなに全力で氷を彫るとは思わなかった。
氷彫刻師の気力と体力は
いつも想像の斜め上を行っている。
「それじゃあ、わかばさんまた明日」
3人は平田さん運転の車に同乗して
宿泊先のホテルへと向かった。
そうだ、私も達成感に浸っている場合ではない。
私だって明日こそが本番なのだ。
2年ぶりの「チャンピオンシップ」。
平田さんのことだ、
きっと今年も皆が驚く何かを
繰り出してくるに違いない。
こちらも万全の体制で
迎え撃たねば。
そう思いつつ、
私も家路につく。
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