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21時過ぎ、
2回めのフォークリフトをオーダー。

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今回は、部品が格段に重い。

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部品とともに
平田さんも慎重に荷台の上へ。

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1段目をスライドさせ積み上げる。
その時、氷の後ろにいた藤原さんが
「あっ!」と声を上げたのが聞こえた。

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部品の一部が折れた。
積み上げ作業中、
わずかに触れたその衝撃で
金魚に付随する水草部分が根本から折れて、
そのまま地面へと落下した。
高さ2メートル近い場所からの落下で
部品は粉々になるかと思いきや
なんと藤原さんの手には、
ほぼ無傷の水草があった。
氷彫刻には技術だけでなく
こういう強運も絶対に必要なのである。

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作業は続行。
二段目を積み上げ。

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氷の隙間に水を流し込む。

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3段目も無事に積み上がる。

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奇跡的に難を逃れた水草も
元通りの位置に収まって事なきを得た。

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10分あまりで積み上げ作業が完了。
一旦姿を消した金魚が別の場所で、再び姿を現す。
平田さんの得意技「分割積み上げ」によって、
こういうトリッキーな変化が常に起こっている。

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「この技は便利なんですけど、でも・・・」
と加瀬さんは言う。
この「分割積み上げ」のため氷にノコギリを入れると、
どうしても分割面がわずかに削れてしまうのだという。
そして、分割したものを元に戻す時、
その微小な「削れ」に影響され
ミリ単位でズレが生じてしまう。
彫る前の氷ならまだしも、
こうして鱗のような微細な彫刻を施した氷を
ズレずに元どおりにするためには
非常に技術と神経を使うのだそうだ。
平田さんの制作現場ではもはや定番となったこの技も、
長年の経験に下支えされていてこそのもので、
誰もがやろうと思ってすぐできるものではないのだ。
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彫刻の下半分への筋彫りが始まる。

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2匹の金魚の下に、
さらに魚らしき形が描き込まれている。
もしや、もう1匹作るのか。

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藤原さんは依然として奥の方で
氷の板を複雑な形状に削り出している。

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筋彫りの線に沿って
チェーンソーで切削。

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図面を確認しながら
慎重に削っていく。

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必ずしも、大きく削る場合はチェーンソー、
細かく彫り込む時はノミで、というわけではなく、
細かい作業でもチェーンソーが使われる場合もある。
そこには平田さんなりの、適材適所ならぬ
「適機材適所」のルールがある。

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他の選手と比べ、平田さんが頻繁に道具を持ち替えるのも、
「適機材適所」の原則のもと、
完成までの最短コースを攻めるためなのだ。

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22:00。
制作開始から5時間半。

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気温は氷点下5℃を下回った。
まだまだ冷えそうな気配だ。

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藤原さんに新たな動き。
削り出していた部品を運び出す。

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平田さんがその部品を受け取り、
さらにドリルで削っていく。

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複雑な形状だった部品は、
さらに薄く繊細な形に仕上がった。

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氷像本体にあてがい、サイズを確認。
藤原さんが作っていたのは金魚のヒレだった。

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22:30。
3匹目の金魚へのウロコ彫り。

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所要時間8分あまりで
ウロコに覆われた。

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その間も藤原さんは
金魚のヒレとなるであろう氷を
ひたすら彫り続ける。

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22時半過ぎ、
一旦姿が見えなくなった加瀬さんが戻ってきた。
手には、コンビニのレジ袋。

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「この辺で二人に何か食べさせないと。
12時過ぎるともう食べてる暇もないからね」

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平田さんはひとたび氷を彫り始めると
そのまま朝まで何も口にしないこともしばしばある。
加瀬さんは何度か平田さんとタッグを組んだ経験から、
翌朝までパフォーマンスを維持するためには、
適切なタイミングでのエネルギー補給が必要だと考える。
とはいえ、明らかにギリギリのスケジュールの中で
現場を離れての食事は到底不可能である。
そこで、全力疾走している二人へ
マラソンの給水所のごとくタイミングを図りつつ、
さっと糧食を差し入れてしまおうという作戦なのだ。

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一瞬だが緊張が解け
和やかな空気が流れる。

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氷像は着々と育っている。

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