安曇野の白鳥シーズン1【外伝】1 ― ぴーちゃんと爺ちゃん

長野県安曇野市穂高北穂高 狐島 (ピーちゃん・フクちゃん保護舎)

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白鳥のピーちゃん
EOS5D + EF50mm F1.2L USM

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爺ちゃんに呼びかける白鳥のピーちゃん
EOS5D + EF50mm F1.2L USM

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爺ちゃんと白鳥のピーちゃん
EOS5D + EF50mm F1.2L USM

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EOS5D + EF50mm F1.2L USM

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EOS5D + EF50mm F1.2L USM

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白鳥の去った後の田んぼ
EOS5D + EF50mm F1.2L USM

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 どうしても白鳥に会いたくなって、ピーちゃんとフクちゃんのところに行ってきた。

 金網越しに白鳥を撮っていたら、世話をしている爺ちゃんがやってきて
「金網越しじゃなくて直に撮ればいいよ」
と入口の戸を開けてくれた。
 爺ちゃんが小屋の中に入って木箱に腰掛けるとピーちゃんが嬉しそうにコーコー鳴きながら爺ちゃんのすぐ近くまでやってきた。
「おーよしよし、ピーちゃんどうした?」
 爺ちゃんの問いかけに応えるように、ピーちゃんは鳴きながらおじぎをしている。
「よくなついているんですね」
「おらのことを仲間だと思ってるんだよ。まだ幼鳥のころからここにいるからね」
と、爺ちゃんはちょっぴり嬉しそうにはにかんだ。
 爺ちゃんもピーちゃんも、多分お互いを家族だと思っている。それはちょっと素敵なことだ。

 ピーちゃんは怪我で片翼を失った。
 だからもう、白鳥の仲間達と一緒に空に上ることはできない。
 けれどもピーちゃんには、代わりに人間の家族ができた。
 これが良いことなのかは、実際の所よく分からない。
 しかし、あの小屋の中で爺ちゃんと静かで幸せそうな日々を送っているピーちゃんを見ていると、この温かい関係がいつまでも続くように祈らずにはいられない。

 写真を撮り終えた私に、爺ちゃんはピーちゃんとフクちゃんの話や、ほかの白鳥たちの話を沢山してくれた。
 別れ際に爺ちゃんは、
「チューリップと藤の花が咲いているんだ、撮っていくといい」
と、自宅の庭に案内してくれた。
 爺ちゃんの庭に咲く、チューリップも藤の花も見事だった。
 きっと、この花たちもピーちゃんのように、爺ちゃんの愛情をたっぷり受けて育ったのだろう。
 爺ちゃんに礼を言って、狐島の水田を後にした。

 白鳥が来ていた水田はすっかり干上がって、白鳥の暮らしていた所が白い土に変わっていた。
 あの賑やかだった冬が幻のようだ。
 仲間達がこの水田に戻って来るまであと半年。
 それまでに、またピーちゃんとフクちゃんに会いに来ようと思う。

 

再編集版あとがき

 この記事を読み返すたびに、胸がぎゅっと苦しくなる。
 この写真に写っているものはすべて、今はもう、どこにもない。
 ピーちゃんも、爺ちゃんもいない。
 この田んぼにも、白鳥が舞い降りることはなくなった。

 愛おしいものは、やがていつか思い出になる。
 それは、わかっている。わかってはいても悲しい。

 だから、せめてもの思いで写真を撮るのだ。
 愛おしいものが存在したという、ささやかな証として。

(2023年3月19日追記)

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