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長野県松本市
国宝松本城氷彫フェスティバル2020『全国氷彫コンクール ワールドチャンピオンシップ』
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かつて、これほど暖かい冬はなかった。
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到底冬とは言えない温暖な気候が続き、
氷が張るどころか、庭の至るところで雑草の新芽が伸び始めている。
ウィンタースポーツのメッカたる長野県北部も肝心の雪が全く降らず、
スキー場開きもままならない。
この時期、各地を賑わせるはずの「雪まつり」も
もはや「雪乞い」の祭りとならざるを得なくなっている。
秋の終わりからずっと、氷点下とは無縁な春のような日が続いていた。
氷彫フェスティバルは当然のことながら氷が主役のイベントだ。
これまでも気まぐれな天気の神様に、幾度となく試練を与えられてきたこの大会。
今回も、相当に熾烈なコンディションを覚悟する。
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ところが、
大会の数日前になって、突然天気予報が変わった。
当日の予想最低気温マイナス5℃。
寒気の南下を阻んでいた偏西風の蛇行が解けて、日本列島は突然いつもの冬に戻るという。
今回ばかりは、気まぐれな天気の神様に感謝せずにはいられない。
そして予報どおり、重役出勤の冬将軍が
北からゆっくりと近づいてきていた。
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2020年2月1日
15時。
長野県松本市
松本城公園入口。
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多くの来客で賑わう松本城公園。
事情を知らない観光客が
「あんまり氷彫刻ないんだね」
とつぶやいているのが聞こえる。
違う、これからだ。これからなのだ。
この後、夜通しの奮闘の末に、
いくつもの氷像がこの公園に出現する。
この寒さと熱気にあふれる夜を見ずして
彫刻を理解したと思うのは尚早だ。
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15時20分、
氷彫刻競技会場。
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競技開始までまだ2時間近くあるが、
多くの選手がすでに準備作業を始めている。
制作時間は17時から翌5時の12時間だが、
実際はこの場所で15時間あまりを過ごすことになる。
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15時40分
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会場では氷彫刻のベースとなる氷の配布が始まっている。
配布される氷柱(純氷)は1本あたり
長さ105センチ
幅56センチ
厚さ26センチ
重さ135キロ
JIS規格の製氷缶で作られるため、
日本全国共通のサイズだ。
※純氷の製造方法については詳しい動画があるのでこちらを参照(YouTube)
この純氷が各チームにつき15本配布される。
そのうち5本は土台として、
残りの10本を最大限に使って氷像を制作するというのが
この大会の基本的なルールだ。
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16時

設計図を見ながら工程の確認。
いざ制作が開始されれば、
悠長に会話できる時間はない。
競技開始前のこの時間もまた重要なのだ。
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陽が西に傾く。

冬晴れの空、風はない。
予報どおり、冷え込みが期待できそうだ。
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16時40分、
開会式。

今回の出場選手が会場に居並ぶ。
今回は国内外から合計16チームが参加する。
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平田・中寺チーム
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平田浩一さんはホテルニューオータニで氷彫刻室長を務める、日本でも数少ないプロの氷彫刻師。
今回平田さんとタッグを組む中寺吉宣さんもまた大ベテランで、氷彫刻のキャリアは20年を超える。
この松本を始めとして国内外の大会や氷彫刻イベントに数多く参加、受賞経験も多い。

この二人が共同で作り上げる作品タイトルは
「ファミリー」
どのような氷像になるのだろうか。
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16時50分。
予定より10分早く競技開始の号令がかかる。
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場内で一斉に電動工具が呻り始める。
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平田チーム前の観客エリアに
平田さんたちを見守る後ろ姿があった。
会場入りしてすぐに、平田さんと言葉をかわした際、
「実は今日、我らが総監督こと加瀬さんも来てますからね」
と驚きの発表が。
出場選手一覧に加瀬さんの名前がなかったので、
今回は加瀬さんに会うことはできないだろうと思っていた矢先のことだった。
「いやー、事前にお知らせしようとも思ったんですけどね。サプライズもいいなと思って」
と加瀬さん。
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加瀬さんは2016年に初めて平田さんをタッグを組んで以来、
数々の大会をともに戦い、
最近では、当初の師弟関係という枠組みを超え、
平田さんの良き理解者としてなくてはならない存在となっている。
今回も、直前に行われた栃木県奥日光の大会に平田さんと一車同乗で参戦し、
終わるやいなや、この松本へと転進してきたというわけだ。
選手として出場すると、平田さんの制作作業を見ている余裕がない。
だから今回は、外からしっかり見ることができる貴重な機会だ、とのことだ。
加瀬さんの登場で、何より心強いのは私である。
「加瀬さんの実況付き」撮影が実現するからだ。
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大きな氷像を作る時、
氷の組み上げ作業を避けて通ることはできない。
設計図に基づいて、正しい寸法に純氷を切り分けて
それを適切な場所に組み上げて接着し彫刻のベースを作る。
地味だが、後の成否を左右する重要な工程。
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多くの観客で賑わう夕暮れの会場。
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眠らない夜が始まる。
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