自宅にて
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今回も、
セミの羽化に関する
リアルな記録です。
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今年もまた、
セミの羽化する季節がやってきた。
庭の桜の枝には日を追うごとに
セミの抜け殻が
一つまた一つと増えていく。
前回、手探りで挑戦したセミの羽化撮影。
撮るには撮ったが
心残りも沢山あった。
なんとしても、再挑戦したい。
夕刻、庭に出てみると
まさに今、桜の幹を登り始めた
セミの幼虫を発見。
手持ちの桜の枝へそっと移し、
自宅へと招き入れた。
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20時24分。
ノソノソと枝を登り続ける幼虫が
枝の先端で動きを止める。
枝からかすかに
ガリガリという音。
歩くときとは違う力の入れ方。
思い切り枝に爪を立てている。
羽化に向け、
身体をしっかりと枝に固定しようとしている。

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21時02分。
幼虫が全身に力を入れて
背中をぐっと丸める。
このポーズで、
殻を破るための内圧を生み出す。

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21時07分。
人間でいうとちょうど肩甲骨の間の部分に
縦一文字に切れ込みが入る。
羽化の始まり。

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22時08分。
背中の切れ込みはみるみる拡大。
セミの背中が見えてくる。

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21時09分。
切れ込みが
眼の間まで広がる。

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21時13分。
切れ込みを押し広げるようにして
成虫の背中がゆっくりと現れる。

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21時17分。
羽化中のセミ特有の
美しいヒスイ色。

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21時19分。
頭部が抜け出る。

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21時20分。
頭部が抜け出ると、
次に脚の引き抜きにかかる。

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21時22分。
のけぞるようにして
脚を殻から引き抜いていく。
殻とは尾部で固定されているので
落ちてしまうことはない。

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21時23分。

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21時24分。
小さく折りたたまれた羽が現れる。
羽の青色は
甲殻類や昆虫に特有の青色血液色素
「ヘモシアニン」だと思われる。
動物の血液色素「ヘモグロビン」は鉄由来の赤色、
「ヘモシアニン」は銅由来の青色をしている。

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21時27分。
前肢が抜け出る。

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21時28分。
頭部から腹部にかけて真っすぐ伸びるのは
「口吻(こうふん)」。
この長い口吻を樹皮に突き立てて、
さらにその内側の針を樹皮に刺し入れて
セミは樹液を吸う。
時間が経つと口吻は不透明になってしまうので、
内側の針を見ることができるのは
この羽化の時だけ。

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21時29分。

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21時33分。

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21時35分。

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21時46分。
全ての肢を殻から抜き出すと、
セミはのけぞった体勢のまま動きを止める。
おそらく、
脱皮直後で柔らかい肢の
強度が増すのを待っているものと思われる。

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21時51分。
腹筋運動の要領で
ゆっくりと上体を起こし始める。

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21時52分。

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21時53分。

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前肢で殻をつかむ。

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前肢で殻につかまると、
すぐに尾部の引き抜きにかかる。

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21時54分。
殻から全身が離脱。

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ぶら下がりの体勢になると、
即座に羽の伸張を開始。
羽の筋「翅脈(しみゃく)」に
体液を送り込んで
畳まれていた羽を展開していく。

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21時55分。

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21時57分。

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21時58分。

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21時59分。

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22時00分。

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22時01分。
羽がほぼ伸びきる。
伸張開始から6分あまり。
想像以上の速さだ。

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22時03分。

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22時06分。
乳白色だった羽の透明感が増してくる。
と同時に、
羽にうっすらと模様が浮き出てくる。

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22時08分。
前肢で殻につかまり、
中肢、後肢は宙に泳がせている。
細い肢の強度確保の一環だろう。

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22時13分。
やや横から見ると、
普通のセミと羽の角度が違う。

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22時14分。

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22時22分。
羽が定位置に収まる。
先程まで羽を反らしていたのは
伸張のための特別ポーズだったらしい。

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22時23分。
羽に特有のまだら模様が浮き出てきている。
どうやら
アブラゼミのようだ。

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22時26分。
殻につかまっていたセミが
突然枝先に移動する。
その直後、
抜け殻が落下。
どうやら殻の固定が甘くなっていたのを
鋭く感じ取ったらしい。
咄嗟の回避行動で
なんとか落下を免れた。

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22時27分。

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22時28分。
刻一刻と
全身の色がはっきりとしてくる。

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22時38分。

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22時39分。

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22時54分。

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23時18分。
20分あまりで、
ここまで劇的に体色が変化する。

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23時28分。

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23時56分。
成虫の体色にほぼ近づいた。

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24時36分。

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両眼の間にあるレンズ状の器官は「単眼」。
黒い方の「複眼」が「物を見る眼」だとすれば、
この「単眼」は「光を感じる眼」だと言われている。
セミの眉間に輝く、美しい紫色の宝珠。

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24時45分。
正面から。

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羽を透過光で撮影。
この複雑で美しいデザイン。
誰がどうやって考え出したのだろうか。

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24時48分。
成虫らしい姿になったアブラゼミ。
あとは明るくなるまでに、
身体の強度が高まるのをじっと待つのみ。

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撮影はこれにて終了。
屋外の、鳥に見つからない場所へ
枝ごとそっと移動させた。
翌朝、見に行くと
セミはまだそこにいた。
私が近づくのを察知したのか
枝からパッと飛び立ち、
そのまま桜の木に向かって羽ばたいていった。
さらば、
美しいアブラゼミよ。
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撮影機材
・EOS5D Mark IV
・EF100mm F2.8L Macro IS USM
・ストロボ + ワイヤレストランスミッター
・ソフトボックス
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なんなんでしょうこれは。
泣きました。
素晴らしすぎます。
写真も、時刻を書いてくださってるのも、殻の固定が甘くなってるのを鋭く感じ取ったと感じ取るその「眼」も、文章も、何もかも。
ちょっと普通じゃないです。総合芸術だとさえ思いました。
特に時刻については、とても学びになりました(写真の趣味はないんですが)。
これがあるとないとでは、セミの一生の把握がまるで違ってくると思いました(そんなにセミ好きではないんですが)。
こんな短時間で、誰にも教わらずに、狂おしいほどに形を変えていってるんですね…。
この作品は、おおげさでなく資産だと思います。
茶色→クリーム色→緑→青という、暖色からだんだん寒色になるという、まるで狙ったような偶然はなんなんでしょうね。セミに限らず自然はすべてですが。
ありがとうございます。心が洗われました。
仲大輔さん
もったいないほどのコメントありがとうございます。
撮影者冥利に尽きます。
よく抜け殻だけが残されているセミの羽化が、実際どのように行われているのかという素朴な興味から取り始めたのですが、その劇的な変身の虜になって撮り続けています。
私の写真からその一端を感じ取っていただけたら、これほど嬉しいことはありません。
感動です!翡翠色!奇跡の色!細やかな観察をアップしてくださり感謝いたします。
先日、午前11時に、公園の木に蝉の幼虫が羽化するところに遭遇しました。息を呑むほどの美しいエメラルドグリーンの姿でした。調べると蝉は天敵を防ぐため夕方から夜に羽化を始める、、とあり、(私は昆虫ど素人です)
ああ、すごいラッキーだったんだ、と思いました。自然光の中のエメラルドグリーンは、本当に綺麗でした。
そんなこんなで、色に魅せられてセミの羽化を調べようと思いました。そして、この素晴らしいお部屋を訪問できて、セミの羽化の神秘を見せていただき、とってもありがたいです。
本当にありがとうございました!猛暑です、お身体守られますように✨
泉あき さん
コメントありがとうございます。
生まれてこのかたセミの抜け殻は数え切れぬほど見てきたのですが、セミの羽化そのものを観察したというのは私もつい最近になってからです。
引っ越した先の家の庭に大きな樹がありまして、その木の根にセミの幼虫がたくさん生息しており、毎夏、そのセミが地下生活を卒業してくるのにあやかって「自宅でセミ羽化観察」ができるという贅沢な環境に暮らしたからでした。
その後、私はまた引っ越しまして、現在は蝉の鳴き声があまり聞こえない場所に暮らしています。
こんなことならもっと撮っておけばよかったな、なんて思いつつ、私もこのセミの写真を見て思い出にふけっています。
やっぱり、羽化中のエメラルドグリーンて美しいですよね。