長野県各所
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とある山中でのこと。
山らしい、風が梢を揺さぶる音や
遠い野鳥のさえずりを聞きながら
撮影に興じていた
すると、自然音に混じって
ぐあああぁんという
くぐもった重低音が聞こえてくる。
少し離れた国道を走っていく
大型バイクの集団だろうか。
とにかく、そういうものを連想させる音だ。
だが、バイクの集団であれば
ゆっくりと遠ざかっていくはずのところ、
その重低音は
加速度的に音圧レベルを上げてきている。
音が近づくにつれ、
音の発生源がバイクではないと分かる。
それは車のエンジンではなく、プロペラ音。
それも単発ではない、大出力のやつだ。
国内に存在する双発以上のプロペラ機で、
この空域を飛ぶ機体といえばもしや・・・
その時、落葉松の林の向こうから
巨大な機体が飛び出してきた。
輸送機、C-130H(Hercules)
(ハーキュリーズ=ヘラクレス)
通称、「ハーク」。

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かくやといわんばかりの低高度。
速度は目視で300ノットくらいは出ていると思う。
完全に作戦向けの機動。

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そのままフルパワーで猛進。
機体の側面に鮮やかな日の丸が見える。
間違いなく、航空自衛隊機だ。

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拡大写真。
垂直尾翼に描かれる黄色のペガサス。
その下に記された機番は
「45-1074」。

航空情報サイト「FlyTeam」で調べたら
「45-1074」は
航空自衛隊小牧基地、
航空支援集団第1輸送航空隊
第401飛行隊所属機。
401飛行隊は
航空自衛隊が運用する16機のCー130H
全機が所属。
「45-1074」も
そのうちの1機だ。
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おそらく、小牧基地を離陸したハークは
長野県の山中に飛来して、
山間部での飛行訓練をしているのだろう。
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Cー130H諸元
全長:29.79m
全高:11.66m
翼幅:40.41m
動力:ターボプロップエンジン(4508軸馬力)×4
最大速度:325ノット=602km/h
巡航速度:300ノット=556km/h
航続距離:3791km
乗員4名
兵員92名(空挺隊員64名)
可搬重量:19.356トン
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1950年代の設計・初飛行だが、
「理想的」ともいうべき優秀な設計で、
半世紀たった現在も
輸送機のベストセラーとして
世界中の空を飛んでいる。

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そうこうしているうちに、
ハークは鋭く右にバンク。
30度くらいはあるだろうか。
巨体とは思えないキレキレの機動。

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胴体下面が露わになる。
せっかくなので、
連続写真でご覧いただく。

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そしてまた、
ハークは辺りを揺るがす轟音を残して
林の向こうへ。
航空祭みたいなド派手な機動を
この山の中で見られるとは。
たった10秒足らずの
個人的航空祭。
良いものを見せてもらった。
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12月10日、
長野県東筑摩郡生坂村。
ヘリのローター音とともに
見慣れぬオレンジ色の機体が飛んでいる。

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これは・・・

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テイルブームと機体下面には「長野県」、
そして機体側面には
「アルプス」の文字。
機窓には
ヘルメット姿の乗組員が見える。

そう、これは、
12月8日に初フライトしたばかりの
新型「長野県消防防災ヘリコプター」。
機番は「JA02NA」。
米国ベル・ヘリコプター・テキストロン社製
「ベル412EPI」。

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グラスコックピット
(計器をほぼデジタルディスプレイ化)や、
デジタル飛行制御を搭載した新鋭機。

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SUBARUが機体調達、
(調達価格:25億560万円)
陸上自衛隊北宇都宮駐屯地に隣接する
SUBARU「航空宇宙カンパニー宇都宮製作所」で
消防防災用の改造を施した後、
11月16日受領。
12月2日に松本空港へフェリー(飛来)され、
8日に消防防災ヘリとして
初フライトを果たした。

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- ベル412EP諸元 -
全長:17.1m
全高:4.6m
主ローター直径:4m
動力:ターボシャフトエンジン(900軸馬力)×2
航続距離:約662km
最大速度:約260km/h
巡航速度:226km/h
乗員:1~2名
乗客(搭乗員):13名
可搬重量:約3トン
1980年代の運用開始以来、
その高性能からベストセラーとなり、
現在も次々と派生・改良型が生産されている。
ちなみに、412シリーズの最新型「412EPX」は
陸上自衛隊で使用している多用途ヘリコプター「UH-1」の次期型「UH-X」として採用。
「UH-2」として活躍する日も近い。
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さて、新型「アルプス」、
ローターの上面は赤白のストライプとなっている。

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右旋回。

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正面。

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機体左前方に見える白い筒状の装置は
「ヘリサット」用の送受信アンテナ。
消防防災ヘリはその任務上、
災害現場等の情報を映像で共有する必要があり、
空撮用カメラを搭載している。
撮影した映像は電波に乗せて送信するが、
長野県など、起伏の激しいエリアでは
電波が地形に阻まれて通常の直接通信では
正常な送受信が困難であるケースが多い。
そこで導入されたのが
「ヘリサットシステム」だ。
「サット」はsatellite
(サテライト=人工衛星)の略。
つまり、ヘリからの映像を一旦
赤道上空の東経162度、高度約3万6千キロの
通信衛星「SUPERBIRD B3」
(スカパーJSAT株式会社が運用)
に向け送信、
衛星が中継したデータを地上局で受信する。
どんなに込み入った地形であっても
衛星のいる辺りの空さえ見えていれば
映像通信が可能。
この宇宙空間を介した通信システムは
まさに山岳王国長野には必須の装備なのだ。

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ちなみに
白い筒状の装置(レドーム)の中には
直径40センチの可動式パラボラアンテナが収納されていて、
通信中はヘリの機動に影響されることなく、
常に静止衛星をロックし続ける。
三菱電機製のハイテクマシン。

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2017年3月5日、
先代の「アルプス」が訓練のため飛行中、
松本市鉢伏山に墜落、
乗員9名全員が亡くなるという
痛ましい事故はいまだ記憶に新しい。

あれから3年、
厳しい道程を経て
ついに「アルプス」は復活を遂げた。
人命救助という重い責務を全うするためには
常に危険と隣合わせかもしれない。
しかし、どうか
ご安全に。
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撮影後記
いくつかの幸運に恵まれて、飛行機を間近に見ることができた。
本来であれば、冬までにいくつかの航空祭に足を運んで、頭上で暴れまわる飛行機を撮影できるはずだった。
しかし、いま世間は最悪な疫病の真っ只中。
いくら広いといえども、基地の敷地内に十数万人がひしめき合う航空祭など無理な話である。
飛行機撮影のため、長野県を出て遠征することすらもためらわれ、結局今シーズンは飛行機に縁のない生活を送った。
そんな意気消沈する日々に今回、神様がちょっとだけ慰めをくれたのかもしれない。
C-130の乗員も防災ヘリの隊員も、いつ来るかもしれない本番に備え、コロナ禍にあっても、日々厳しい訓練を積み重ねている。その姿に敬意を表したい。
立場は違えど、彼らは同じく「守るものがある」人たちだ。
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