長野県安曇野市穂高北穂高 狐島 ピーちゃんフクちゃん保護舎
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うだるような暑さが続いている。
ふと、ピーちゃん達は元気でやっているのかと気になって、白鳥の保護舎を訪ねた。
雪の白さを身にまとった白鳥だから、この暑さで溶けそうになって、さぞバテているに違いない。
心配しつつ小屋をのぞき込むと、意外にも元気な彼らの姿が目に飛び込んできた。
ピーちゃんは小屋の奥の方で、屋根から垂れ下がった紐を背伸びしてしきりにパクパクついばんでいる。
ピーちゃん的に気になる物件なのだろうか、それとも暇つぶしなのだろうか。
ふと私の気配に気づいたのか、ピーちゃんはこちらを見て、面白がって近づいてきた。
夏になるとめっきりここに来る人も減ってしまうから、突然来た私がよほど珍しかったのだろう。
マクロレンズをつけて、小屋の網にへばりついてシャッターを切る私の前をピーちゃんは行ったり来たり、上から下から眺め回して、挙げ句の果てにレンズを不思議そうにのぞき込んできた。
ファインダーいっぱいにピーちゃんの顔。いつか白鳥の爺ちゃんが、ピーちゃんを抱きしめたくなると言っていたが、その気持ちが分かる。
ちなみに爺ちゃんは本当にピーちゃんを抱きしめて、ちょっと嫌われた事があったらしい。
白鳥たちに抱き合う文化はないのであった。
夢中で撮っていたら、突然ピーちゃんがレンズを網越しに「ぱくっ」とつついた。ピーちゃん、カメラは食べられないんだよ。
小屋の前の田んぼでは、稲がすくすくと育っている。もうそろそろ穂が出てきそうだ。
北に行った仲間は元気だろうか。
この稲が収穫されて、再び田んぼの土が顔を覗かせるころ、また無事に戻ってきてくれるだろうか。
秋の終わりに冷たい風と一緒に仲間達が戻ってきたら、どうか教えてあげてほしい。
この田んぼを一面に覆っていた緑のことを。
暑かった穂高の夏を。
再編集版あとがき
この写真を撮っていた頃、いわゆる「人生の壁」と言うべきものにぶち当たって、けっこう精神的にくたびれていたように思う。
そういう中で写真を撮ること、とりわけ白鳥を撮ることは、すさんだ私の心を大いに癒やした。
いろいろ溜息の出ることばかりだったけれど、白鳥を撮っている間だけは、いろいろ忘れて気持ちを軽くすることができた。
ただ、春になって白鳥たちが北へ帰ってしまうと、気持ちはみるみる支えを失って、再び茫漠とした寂寥感に苛まれる。
そんなとき、私は決まってピーちゃんに会いに行ったのだ。
ピーちゃんはいつでもそこにいて、きょとんとした顔で私を迎えてくれた。
ピーちゃんとひとり語らいながら、北に帰った大勢の白鳥たちが、再びこの場所に、一日でも早く舞い戻ることをひたすら願ったことを思い出す
(記 2018年8月11日)
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