長野県大町市
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暖かすぎる冬。
山中は辛うじて雪化粧しているが、
それとて長くは続かない。
降ってきたのは
雨。
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いつもであれば、
粉砂糖のようなサラサラ雪が
背中をうっすら白くするくらいだ。
だが、冷たい雨は
厚い冬毛の上にまとわりつき
ずっしりと重くなる。
カモシカはそれを
鬱陶しそうに振り払う。

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細かい水滴が
辺りに飛び散る。

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やれやれ、といった顔に見えなくもない。
寒いのも大変だろうが、
冷たい雨に降られ続けるというのも
さぞかし辛いだろう。

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次の日。
昨日、一頭で雨に濡れていた彼女のもとへ
子供が帰ってきていた。

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そろそろ親離れの時期が近づいているのか、
ちょっとした冒険の旅にでも出ていたのかもしれない。

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まだまだ表情はあどけなさを残す。

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でも、眼光は
少しずつ大人たちと同じ鋭さを
宿しつつある。

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この日、この親子にまた一つ変化があった。

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母親の後ろに
別のカモシカの影。

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オスのカモシカだ。

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特徴的な角の形から、
2018年1月にこの場所でこの母親と恋仲になっていたオスだと分かる。
(詳しくは過去記事『ニホンカモシカの親子と夫婦』参照)

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恋の季節を迎え、
またこの母カモシカの縄張りにやってきたのだった。

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母カモシカからはかなりの距離を取って後を追っていく。
しかし、親密な仲になるには
まだまだ時間がかかりそうだ。

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人間のように「元カレ」「元カノ」という気安さはない。
同じ相手であっても
厳密に最初からやり直しらしい。
カモシカって大変だな。

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立木にマーキングする母カモシカ。
見ている間、オスは一切マーキング行動はしなかった。
やはり、オスによる「通い婚」という図式なのだろう。

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川の中に入る仔カモシカ。
カモシカは平気で川を渡る。
だが、やや珍しい光景。

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それはさておき、ちょっと気がかりなことがあった。
私が出会ったカモシカの中で一番の古株である
馴染みの(?)カモシカにずっと会うことができずにいる。
縄張りを出てしまったのか、
それとも命を落としてしまったのか。
そんな中ここに来て、ようやくうっすらと雪が積もり、
彼らの行動が視覚化できるようになった。
雪の上にカモシカの足跡。
蹄の形が特徴的。

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足跡は冬枯れの森の中へ続いている。
確かにあのカモシカは生存していて、
しかも、この近くにいることは判明した。
まずはホッとする。

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足跡の向いている方を参考にしながら
心当たりの場所をくまなく探し回る。
そして、見つけた。

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この均整の取れた風貌。
やっぱり君は美しいな。

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しかも、とても元気そうだ。

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かなり近づいても怖気づかない度胸も健在。

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まっすぐ見つめられると
ドキドキする。

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4つの蹄でしっかり地面を踏みしめているのを見ると
ちょっと嬉しくなる。

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雪の間から顔を出したシダを食べる。

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いつもだったら深い雪を掘り起こして
食べ物を探さないといけないから、
食事の面では、
とても過ごしやすい冬なのかもしれない。

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食事しながら、
たまに、こちらを振り返る。

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あ、しゃがんでおしっこしている。
動物写真家の宮崎学氏によると、
こうやって腰を落としておしっこするのはメスの特徴だそうだ。
加えて、以前に子連れでいたことがあるので、
このカモシカはメスで間違いないと思う。

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悠々とした足取りでゆっくり歩いていく。

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時折、風の匂いをかぐ。

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時々、振り返る。

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森の奥へと小さくなっていく彼女を見送る。

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次はいつ会えるだろうか。
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