長野県大町市 若一王子神社 例祭奉祝祭(宵祭)
【前編】
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艶めかしさは
その指先に宿る。
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雨は
降りしきる。

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祭囃子が
響き渡る。

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宵祭も終盤。
全ての舞台が一斉に動き出す。

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舞台がすれ違うと始まる
「喧嘩囃子」。

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舞台同士が
それぞれのお囃子を
ぶつけ合う。

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競り合いながら重なる響きに
宵祭は最高潮を迎える。

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そして
舞台はそれぞれの町内へ。

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祭囃子が
遠ざかる。

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再び訪れた
夜のしじま。
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撮影後記
私が撮影をしていると、とある会話が耳に入ってきました。
「この舞台の素晴らしいところって分かります?あれ見てください、ロウソクの灯りですよ。
他の舞台は、みんな電気に変わっちゃってますけど、うちは本物の炎の灯りなんですよ。気をつけないと燃えちゃいますけど、それでもうちはロウソクなんです!」
そこには、舞台を写真に収めようとしているお客さんに一生懸命レクチャーする、大黒町の方の姿がありました。
私はこの会話を聞いて、心底嬉しく思いました。
ああ、この人達は「何が大切なのか」を理解してそれを守ろうとしているんだな、と。
傍目に素晴らしいものであっても、それを所有する人がその価値に気付かず、利便化とか近代化という名のもとに大切なものを消失させてしまう悲劇は、往々にして起こります。
そして、失われたものはほとんどの場合、元には戻りません。
そういう悲劇を回避するには、それを所有する人がそのものの価値を理解していることが何より必要です。
その点で、大黒町の方々はそのことを分かっている。
素晴らしいことです。
言わずもがな、精緻な彫刻に飾られた大黒町舞台は長野県宝にも指定されるほどの、美術的にも大変価値の高いものです。
しかし、この舞台の素晴らしさはそれだけにあるのではありません。
この舞台が素晴らしいのは今もなお「生きている」舞台だということです。
いくら文化財的価値が高いものでも、それが人の営みから切り離された時、それは死んでしまいます。
この大黒町舞台とて、祭の日、表に曳き出されることなく博物館に展示されるだけになるとしたら、それはもう、よくできた一つの工芸品に過ぎなくなってしまいます。
美術館に置かれた仏像のように、どこか白々しいものに成り下がってしまいます。
この大黒町舞台は今なお、人々の営みの中で呼吸し、生きています。
2年ぶりに見たお囃子奏者の皆さんは、その中の幾人かは初陣を飾る若者でした。
江戸時代から守り受け継がれてきたこの舞台が「身体」なのだとすれば、
お囃子という祭のエネルギーを、世代を超えて新陳代謝を繰り返しながら継承し続けるお囃子奏者や保存会の方々は、いわば舞台の「血液」です。
この舞台が生きているというのはそういうことです。
そして、ただ漫然と生きるのではなく、大切なもの、守るべきものを皆の力で未来に繋いでいく。
大黒町舞台にはそんな「魂」を感じます。
この舞台が私を惹きつけてやまない理由はそこにあります。
あらゆることが簡略化され、本来の意義をを薄れさせていく中で、昔ながらの物事を守り受け継いでいくことは至極大変なことです。
そこには、楽しいことよりも、面倒で苦しいことのほうが多かったりします。
私がこの舞台を初めて見たのは、今、後進の指導にあたっている諸先輩方が若手のお囃子奏者として活躍されていた頃のことです。
それから幾星霜。
大黒町舞台はその頃と変わらぬ佇まいで、お囃子の音色を響かせています。
願わくば今後数十年、数百年と、それが続いていって欲しいと思います。
私はそんな大黒町舞台の今の姿を、ささやかながらも
写真として残していけたら、と思っています。
今年も伊藤美晴さんをはじめ、大黒町の皆様には大変お世話になりました。
心より御礼申し上げます。
球わかば
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