平田謙三 平田浩一 氷彫刻『2015年 飛翔』【3】

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午後7時過ぎ。

他の作業と並行して
本体の氷塊の加工が始まる。

まず、氷塊の側面を大ノミで整える。

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そこにぬるま湯で温めたアルミ板を押し当てる。

アルミ板に触れた氷はたちどころに解け、
アルミ板と同様の平滑な表面となる。

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そこに、同じく断面を平滑にした小さな氷塊を押し当てる。

氷塊の凹凸のない断面同士は互いに密着し、
それ自身に蓄えられた冷気によって凍りつき、
ひとつの氷塊へと融合する。

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大きな氷塊に接着した突起部分に
筋彫りを施す。

もちろん、図面なしのフリーハンドだ。

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チェーンソーでの切削。

大胆な手さばきで
氷がみるみる削ぎ落とされていく。

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手の動きが止まることは全くない。

矩形だった氷が多面体へ、
そして曲面立体へと姿を変える。

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今度は、突起部分の曲面を延長するように
本体の氷塊を削っていく。

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ノミの刃が氷の表面をひと撫ですると
金属のようなギラギラとした光沢の断面が現れる。

浩一さん自らの手によって
全ての刃物は丹念に研ぎこまれている。

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やがて、大きな氷塊から突き出す
鉤状の形が見えてきた。

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さらに、突起部分の曲面を延長していく。

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作品の原型が見えてきた。
間違いなく、何かの頭部だ。

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午後8時17分。

浩一さんの頭の中のイメージから姿を現した造形。

平面図を立体に展開するだけでも容易なことではないはずなのに、
一体どういうことなのか。

ちなみに、この時点で
他のチームはまだ本格的な切削作業に入っていない。
驚異的な作業のスピードにも愕然とする。

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作業の手は止まらない。
頭部の下に接合された氷に筋彫りを施す。

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線にそってチェーンソーで荒削りする。

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さらに、ノミで形を整える。

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この形は・・・

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午後8時20分。

気温摂氏0.3度
再び雪が激しくなってきた。

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数十メートル先も霞んで見えなくなるような降り。
辺りが瞬く間に白くなっていく。

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大雪でも手を止めることはできない。
上着のフードを被って、作業が続けられる。

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午後8時45分。

平田親子が何をつくろうとしているのか、
誰の目にもわかるようになってきた。

相手を見据える表情と鋭い爪先。
間違いなく、大きなワシだ。

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それぞれの作業を黙々と続ける親子。

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浩一さんが茶封筒の裏に急いで描いた設計図。

すでに役割を終え、
その上には雪が積もり始めている。

結局この後、この茶封筒が
浩一さんの手に取られることはなかった。

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【4】に続く 

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