加瀬秀雄 赤羽目健悟 氷彫刻『さあ出発!!海の中の新しい仲間と共に』【9】

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深夜1時過ぎの会場に
これほどの観客がいたことは
今までなかった。

松本の大会も
終了から復活という流れを経て
新たな時代を迎えたのかも知れないなと思う。

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この頃になると
各チームの作品の全容が見えてくる。

5時30分の製作終了は絶対で、
彫刻が完成していなくても
強制的に作業終了となる。

だから、この時点で
作業の進捗状況を見極めて
完成までの筋道を立てなくてはならない。

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加瀬さんは、先程三枚おろしにした氷板を彫刻している。
聞けば、これから台座を飾る海の生物を
複数彫っていくのだという。
聞けば、熱帯魚を3匹、タツノオトシゴを2匹、
本体とは別のウミガメを1匹だという。

製作終了まであと4時間。
それほどの手数をこなすことはできるのか。

「まあ、できる限りやってみます」
そう加瀬さんは話し、作業場に戻っていった。

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そして加瀬さんは、
黙々と氷板を彫り続ける。

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その傍らで、
赤羽目さんはダイバーの氷塊の曲面を
棒グラインダーで整えている。

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一箇所を集中的に仕上げることなく、
全体のバランスを見ながら進めていく。

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全体的な造形のバランスを重視したこの作業のやり方、
これも「平田流」ならではである。

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1時30分。

製作開始から8時間が経過。
気温は摂氏マイナス1.5度。

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1時56分。

赤羽目さんがチェーンソーで
四角い氷に幾筋もの切れ込みを入れている。
これは氷を彫刻しているのではない。
ある目的があってやっている。

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その目的とは
「削り屑」、通称「雪」。

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この雪を、加瀬さんの彫った魚型の氷板に撫で付ける。
魚の表面には帯状の窪みが作られていて、
雪がその窪みに入るようにできている。

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雪が魚の白い模様になった。

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2時20分。

残った氷柱を積み上げ
新たな氷塊を作る。

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そこに筋彫りのデッサン。

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三角の氷を付け足す。

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そして、切削。

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赤羽目さんが猛スピードで
氷を削っていく。
あっという間に具体的な形が見えてくる。

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さすがはチェーンソーマン。

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普通ならば平ノミで慎重に削っていく工程をすっ飛ばし
チェーンソーだけであらかた削ってしまった。

恐るべし。

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グラインダーでの曲面出し。

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背中に降りかかる削り屑が
もう解けることはない。

完全なる氷点下だ。

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ドリルに持ち替えて、甲羅に筋を入れる。

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平ノミで、甲羅の凹凸を強調。

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ヒレと頭へウロコ模様を入れる。

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そして、本体上に設置。

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別に作った
右前ヒレを接着。

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3時50分。

ウミガメ(小)が泳ぎだした。

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ウミガメ(小)の作業と並行して、
加瀬さんは別の氷板を切断。

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今度は二枚おろしにする。

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グラインダーで形を出していく。
この形からしておそらく、
タツノオトシゴだ。

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加瀬さんは
氷彫刻の下にうずくまって
小さな海の生物を黙々と作り続ける。

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赤羽目さんは
平ノミで像全体の調整に入った。

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4時。

タイムリミットまで90分を切る。

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いよいよ
ラストスパートへ。

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【10】に続く

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